ベルサイユ製麺

隠された時間のベルサイユ製麺のレビュー・感想・評価

隠された時間(2016年製作の映画)
3.0
酷暑。
こう暑いと、カン・ドンウォンでも見ざるを得ない。もうそういう段階まで来ているんだ。大袈裟に聞こえるかもしれないが、命には変えられない。もう、カン・ドンウォンしかないんだ…。

漠然と“島”と呼ばれている田舎町に越して来た、義父と暮らす少女と、身寄りがなく施設で暮らす少年。ボーイ・ミーツ・ガールです。で、彼等が少しずつ心を通わす繊細な描写と、唐突にぶっこまれるSF的出来事…。あぁ、夏にピッタリ。爽やかで、わたくしの天下一品のこってりスープみたいなドロドロの血液が若干勢い良く流れ出したような気がします。
しかし、なんと大胆な事に冒頭30分超、カン・ドンウォン出ません。焦らしますね。もうそろガ、いや少年達は良いから早くドンウォンを寄越せや!と苛立ちがピークに達した辺りで、来ました!カーン!・ドン!ウォーン!!ああクール!いやコールド!体温がどんうぉん下がっている感じがしますぞ。いい。いいよ。思った以上に効きますわぁ。脇の下に挟むともっと良いかもしらん…。

有る出来事をキッカケに、異なる進み方の時間の中に入ってしまった少年たち。取り残された少女。…字面だけで見るとちょっとジャパニメーション的なソフトSFって感じがしますね。実際何らかの影響はあるのかもしれません。時間の流れが極端に遅い世界で好きな事だけして楽しむ少年達の描写はちょっとドラえもんの独裁者スイッチみたいだったりして愉快痛快。
ただ、トータルで映画として見るとあんまり良いとは思えなかったです。そもそものSF的現象の原因、理屈が全く説明出来ない雰囲気任せな作りなので、何をどうすれば収拾がつくのか、見ていてさっぱり分からない。ゴールが見えないままひたすら逃げ回る様な展開で、だんだん求心力が弱まっていくのを感じます。お話の行く末に興味が無くなってからは130分という長尺は寧ろアダに…。勿論、「理屈はどうでも良い」とか「自分には理屈がよく分かった」という方にとっては始終楽しめたに違いないです。好みの問題も大きいでしょう。…それでも個人的にどうにも許容出来なかったのは、如何に美しいとは言え、少女の倍程の年嵩の(すいません!)オジサンが、少女の手を引いて逃げ回るという見た目のアンモラル感です。…これもジャパニメーションの影響でしょうか⁈逆なら良い、って訳でも無くて、いっそ不能な位の老人だったら…やっぱ駄目か。
それにしても、日本映画界に今の様な「夏だ!アニメ映画だ!」みたいな流れが定着する前は、もっと実写のジュブナイル×ソフトSF作品が量産されていた時代が有ったものじゃが…とすっかり老いぼれは感慨深く感じてしまいましたね。その点で言えば、今作の雰囲気、特に少年少女達のパートには否定出来ない魅力を感じました。目が痛くなるような深緑の中を歩く彼等。清涼感に満ちています。況やドンウォンをや!
キム・ジウン監督『人狼』楽しみですね!