てぃだ

パーフェクト・レボリューションのてぃだのネタバレレビュー・内容・結末

3.4

このレビューはネタバレを含みます

 「障碍者になりたい」。こんなことを言うと怒られそうだけど、本気でそう思ったことがある。中学生の頃、一つ年上の先輩がいわゆる障碍者だった。彼は乙武洋匡みたいな身体をしていたのに車いすは使わなかった。口が達者でお喋りで明るくて、いつも笑顔で友達もたくさん。悔しいけど五体満足な僕なんかよりも友達はたくさんいたし人気者だった(女子の友達もたくさんいたから「彼女」もたぶんいたと思う。)僕は先輩が羨ましかった。僕だって先輩みたいな身体だったらもっと友達も多かったのに・・なんてバカなことを考えたことさえある。先輩は僕と仲良くしてくれた。僕は先輩のパシリみたいな感じだった。カバンを持ったり階段を上下したり下校する際、僕はよく先輩を肩車した。毎日じゃなかったけど(誤解しないでほしいんだけど別に僕は先輩にいじめられていた・・とかいうわけじゃない。家が近所だったこともあってよく会話したし僕自身も先輩を尊敬していたので進んでこういうことをしていた)。うん。江戸川乱歩じゃないけれど僕は先輩の人間椅子・・いやいや人間車イスみたいだった。先輩元気ですか。今はどこで何をしているんですか。もしこれを読んで僕のことを思い出したら連絡くださいお酒飲みましょう。







 障碍者が主役の映画が出てくるとつい僕がチェックしまうのはその先輩を探してしまっているからなのかもしれない。僕は生まれて初めてお目にかかった障碍者がその先輩だったから、僕の中では障碍者はみんな人気者で明るくて友達や彼女も多くて後輩をパシリで使う傲慢ささえもあるスターみたいな存在・・のイメージがとても強い(もちろんそんなわけない)。もし今もご存命だったらおそらくこの映画のリリー・フランキーみたいな大人にまじでなっているかもしれない。20歳も年下の女の子を侍らせて「これ?俺の彼女。セックス?当然、もうとっくにしました!」みたいなノリ。







 「障碍者の性と恋愛」を真正面から取り組んだ本作。何だか色々と風呂敷を広げすぎだよなぁと思う。障碍者あるある・・も描きたいのは分かるんだけど、あくまで本筋であるはずの「障碍者とセックス」の部分がやや薄れ気味、ぼやけているのが惜しい(ヒロインが何度も叫ぶ「革命」ってのが一体どういうことなのかよく分かんないし、「子供は作りたくない。子供ができるのが怖い」と言いながら結局二人のカップルの愛情表現はセックスだったり・・どっちなんだお前ら感もあり手放しで応援したい恋路というわけでもない。イライラさせられる場面の方が多い)。ただ、障碍者のセックスに対する本音を描きながら、作り手も大胆に切り込む勇気はなかったようで、最後は少女漫画風味の甘酸っぱいファンタジーとしてまとめている。それはそれで作り手の優しさというよりは甘さなのかなぁ。「せめて映画の中でぐらいは障碍者にだってこんな素敵な恋愛をしてほしい」ということだろうか。余計なお世話ではないか。これを見たホントの障碍者の方々が喜んで感動して映画が終わった後の現実を生きていく上で希望を見出してくれたんならそれはそれでいいと思う。けど僕はラストはちと頂けない。手前のダンスで終わった方がよかったんじゃないか。あのシーンはとても綺麗だった。てか設定の時点で既にハッピーエンドなんか不可能なカップルなのだ。障碍者にソープ嬢(娘の方は精神的に不安定)。このカップルでどこぞやの少女漫画みたいなハッピーエンドなんか期待しろって方が・・ちと無理。あのダンスが白眉だったため余計にそう思った。気持ちは分かるんだけどさ。
てぃだ

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