バナバナ

ラッカは静かに虐殺されているのバナバナのレビュー・感想・評価

5.0
ラッカはユーフラテス川沿いの肥沃な土地に出来た美しい都市。
シリアの内陸部にある為、これまでイスラエルとの中東戦争やその他隣国との小競り合いでも、戦禍に晒されることはなかった。
しかし、2013年ISILが町を占領した事から様相が一変する。

たくさんの市民が殺され、これまで市民の憩いの場所であった町の中心の公園の柵に、斬首された人たちの首が晒されるようになる。
危険過ぎて、さすがのアルジャジーラも入って来られず、ラッカで起こっている事を世界中の人は知らないままだ。
これではいけないと、市民の有志が「RBSS=ラッカは静かに虐殺されている」を立ち上げる。
RBSSが、スマホ等で町で起きている虐殺の様子を密かに撮影し、世界中に伝える為だ。

だが、すぐにISILにその存在を知られるところとなり、主要メンバー達はトルコやドイツに脱出する。
ラッカに残っている家族は殺されたり(ISILはその映像をアップしている)、
シリアを脱出しようとして地中海で小さなボートで沈んで亡くなった人もいる。
そのうちトルコでもISILによるRBSSメンバーの暗殺事件が起こり、残ったメンバーもドイツへの移住を余儀なくされる。

ISILがラッカの町で大人達を殺しといて、自爆テロを仕掛けるために、
子供たちを少年兵にしようとお菓子やおもちゃを与えて飼っていたとは、どこまでえげつない奴らなんだと思った。

この作品は、2015年に彼らの活動が国際報道自由賞を受賞した辺りまでのドキュメンタリーだ。
しかし、この受賞によって彼らがドイツに居ることがバレ、またISILから殺人予告が届く…。

ラッカはその後、シリア民主軍によって2017年10月17日にISILから完全開放されたが、その後もアサド大統領を支援するロシアから空爆を受けている。
ラッカに平安はまだ戻っていない。
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