茶一郎

ラッカは静かに虐殺されているの茶一郎のレビュー・感想・評価

4.2
 シリアの街ラッカを占領した過激派組織「イスラム国」に対し、報道で闘う市民ジャーナリスト集団「ラッカは静かに虐殺されている(RBSS)」を映すドキュメンタリー『ラッカは静かに虐殺されている』。
 本作は、自ら麻薬戦争の戦場にカメラを持って飛び込み、最終的にヒッチコックもビックリな「巻き込まれ(にいった)」型サスペンス・スリラーの様相を見せた強烈なドキュメンタリー作品『カルテル・ランド』のマシュー・ハイネマン監督の次作になります。

 ラッカを幽霊の街(原題は『City of Ghosts』)にしておきながら、「ラッカは平和ですよー」とプロパガンダ映像を流すISに対抗するため、真のラッカを報道するRBSS。二転三転四転……n転と監督のコントロールを越えてトンデモナイ方向に進んだ『カルテル・ランド』の一方、マシュー監督は本作において、文字通り「命がけ」で報道するRBSSの様子を非常に冷静で、静かに見つめていきます。
 何よりマシュー監督の手腕は、現在、混乱を重ねているシリア内戦(ごめんなさい。不勉強ながら背景を完璧に理解できていません)において、「IS 対 RBSS」という構図を分かりやすく抜粋して見せきった素晴らしさにあります。

 そして、この「IS 対 RBSS」は映像メディア戦争に到達しました。思わず言葉を失うのは、RBSSの創始者の一人が、父の死をISが作った安いPVのようなVTRで知るシーンです。事実を曲げてでも、安い演出を加えてでも市民を煽ろうというIS。RBSSは、あくまでも真摯に凄惨な事実を伝えていきます。
 そのような映像メディア戦争の勝敗。トルコからドイツへと国を逃げるRBSS。そこにドイツの移民排斥運動が登場する。それでも悲痛な現実に対し、さらに危険を犯して報道を加速化させるRBSS。もうこれはポリティカル・サスペンスの傑作『大統領の陰謀』を超え、「報道は生きるか・死ぬかである」というオリヴァー・ストーン監督によるポリティカル・スリラー『サルバドル』の狂気に達しているように見えます。

 本作『ラッカは静かに虐殺されている』は、暴力に対しジャーナリズムで闘う現代の英雄、その静かな苦悩と葛藤を大声で世界に伝える見事なドキュメンタリー映画でした。