マクガフィン

ラッカは静かに虐殺されているのマクガフィンのレビュー・感想・評価

3.6
シリア内戦をテーマにしたドキュメンタリー。センスある邦題かと思いきや市民ジャーナリスト集団の名称・RBSS(Raqqa is Being Slaughtered Silently:ラッカは静かに虐殺されている)が邦題。

シリアの現状をSNSを通して世界に発信する市民ジャーナリスト集団・RBSSのドキュメンタリーだからか、作品も同様にSNS(スマホやPC)越しで映像が流されるので、作品としての映像の激しさは予想よりも抑えられていると前半は感じた。SNSを強調したいのか、幅広い世代層に見てもらう配慮か。

ISはメディアやSNSを通して、活発なプロパガンダ活動をして兵士を募集したり、過激な思想を広めているが故にメディアやSNSの恐ろしさも熟知している。それ故にRBSSの活動を撲滅させたりプレッシャーをかけたりと躍起になる模様が伝わる。躍起になればなるほどRBSSの活動は効果的にも感じたりした。また、SNSの両面性が描かれるようでもある。

スマホで情報のやり取りをしているので、iPhoneの着信音がリフレインされるかのように何度も流れる。着信音が鳴ると静寂に包まれ、次第に効きなれた音色が不気味な音色に聞こえてくるようにもなり、何ともいえない感情が押し寄せる。

記念写真で笑顔を要求されても笑顔になれないこと、仲間の死に思わず全身が震え出し、ISに殺人予告をされた男の煙草を持つ手が震えたり、ラッカ国外に逃亡したRBSSの者達の魂が未だにシリアに残っているようでもあり、国外に脱出しても命の保証がない現状が静かに焙りだされる。
心苦しいシリアの惨状もそうだが、RBSSの命を懸けた活動を積み重ねることで、事態の深刻さがより心に沁み渡る。

人生を懸けたジャーナリズム精神に敬服する。
映画館で観賞できて良かったが、iPhoneの着信音がトラウマになってしまった。