dita

ラッカは静かに虐殺されているのditaのレビュー・感想・評価

4.0
@シアターセブン  

奥歯をずっと噛みしめながら観た。どんな感情も追いつかず、思考が停止した。平和ボケが悪いことだとは思わない。むしろ彼らが命懸けで発信するメッセージを命を懸けずに拡散出来るのはわたしたちだ。

冒頭の記念撮影のシーンで感じるカメラマンへの嫌悪がラストカットで自分に跳ね返ってきた。彼らは英雄ではなく人間だった。
人を愛し、故郷を思い、恐怖に震える。当たり前の感情を押し殺し、当たり前の日常を犠牲にして発信する。尊いということばが安売りされる昨今、本当の尊さとはなにかをずっと考えている。

ラジオ・コバニを観た後もそうやったけど、帰り道全然早く歩けなくてめっちゃ抜かされて、家に帰ってなんやかんやして、夜風呂入って上がって猫が寄ってきて抱き上げて温かさを肌で感じた瞬間にぶわーっと涙が出てきて止まらなくなった。失われた命の重さを、さっきまで生きていた人の温かさを想う。

それこそSNSでこの作品を観たいという書き込みをよく目にするけど、観たいなら観ない理由を探さずに観る理由を見つけて観てほしい。
関西は七藝・シアターセブン・出町座・7月から元町映画館。知る機会を与えてくれる劇場はたくさんある。あなたの92分を彼らに。
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