でしょうかな

ラッカは静かに虐殺されているのでしょうかなのレビュー・感想・評価

4.3
2011年にアラブ諸国で起きた民主化運動「アラブの春」。シリアの地方都市ラッカも、長期に渡るアサド政権への不満が爆発し、2013年には政府が統治を放棄した。だが、その空白地帯に潜りこんだISは、ラッカを完全に孤立させ恐怖によって支配した。このドキュメンタリーは、ISに抵抗を続ける市民メディア「ラッカは静かに虐殺されている(RBSS)」に密着したものである。

見るべき。小綺麗なプロパガンダ映像の化粧で隠された残虐な独裁組織ISと戦う勇敢な人々の姿がそこにある。もちろん、このドキュメンタリーにも、そこかしこに「わざとらしい」場面はあるが、決してRBSSや彼らを支援する欧米の人々に都合がいいだけの内容でもない。冒頭、笑顔で彼らを称賛する人々への固い表情や、途中に出てくるネオナチなどを見れば、欧米を理想化してはいないことがわかるだろう。

世界から孤立し、ゆっくりと、まさに静かに虐殺されている都市ラッカの現状を知らせようと、命懸けで闘う人々の想いが、この映画を生み出したと言えるでしょう。

ところで、某所に書き込まれたこの映画の感想で、「最初に無知な連中が暴動を起こしたのが悪い」「同情する気にもならない」「世界を巻き込むな」ってのがあって、少し怒りを覚えたんですが、見方を変えれば、そんな自分の周りにしか興味の無い人間にも観させた事実が、 RBSSが無関心との闘いに勝利したことを逆説的に示しているのかもしれないと思いました。
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