たく

ラッカは静かに虐殺されているのたくのレビュー・感想・評価

3.8
アサド政権下のシリア反体制革命の隙をついて台頭したISに乗っ取られた故郷のラッカを取り戻すためメディアを通して戦う、自主団体「ラッカは静かに虐殺されている」の活動を捉えたドキュメンタリー。

複雑な政治的事情はよく分からないけど、ISといえば数年前に突然出てきた危ない団体のイメージ戦略が強烈。ISは当時イスラム原理主義みたく報道されてたけど、彼らの残虐非道な行為はイスラム教の本質と全く関係ないはずで、イスラム教=テロリストと誤解させた罪は大きい。
このISが映像のプロを雇ってハリウッド並みの完成度の高い動画を上げるも、結局はラッカ側とのメディア戦争に負けて通信規制をし始めるあたりが、ペン(=映像)は剣よりも強しを力づくで組み伏せようとする暴力の恐ろしさを際立たせる。

ラッカ現地組と国外組がタッグを組んでISの厳しい規制をかいくぐりながら情報のやり取りをする中、メンバーがどんどんISに粛清されていく恐怖がリアルに伝わってくる。そんな中で子どもが生まれ、親としての責任を感じていくくだりがジーンときたね。
ドイツに退避した国外ラッカ組が今度は現地の右翼デモ隊に排斥される様子に、つくづく人間の不寛容さを考えさせられた。
たく

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