ドトル

テリー・ギリアムのドン・キホーテのドトルのレビュー・感想・評価

4.4
ドン・キホーテといえば、空想の世界で生きる男だ。それは時に滑稽で、時に狂気を感じ、そして時に物悲しい。
これまでの監督のイマジネーションに溢れた作品群を観ていると、なぜ約20年間もこの作品の映画化にこだわったのか窺い知れる。

作品のメッセージは、数年前に公開したスピルバーグの「レディ・プレイヤー1」と正反対だ。
あちらの映画では、VR世界に埋没する主人公が、最終的に「仮想現実だけでなく、現実の人間関係も大事」ということを知る着地だったと思うが、こちらは、主人公であるトビーが狂気の世界に陥っていくにつれ、むしろ画面はどんどん色彩を帯び、世界は美しくなっていく。(無論、狂気が深まるにつれ、物語はどんどん支離滅裂にもなっていくのだが。)

だけれど、「世知辛い現実世界よりも、美しい空想の世界で生きて何が悪い!」という吹っ切れたメッセージが、むしろ清々しいと感じた。

あと、アダム・ドライバーのコメディセンス最高。
ドトル

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