マヒロ

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結のマヒロのレビュー・感想・評価

4.0
犯罪者ばかりを集めた決死隊・通称スーサイド・スクワッドは、アマンダ・ウォラー(ヴィオラ・デイビス)の指示の元南米の島コルト・マルテーゼに潜入し「スターフィッシュ計画」と呼ばれる謎の実験を阻止するため、ヨトゥンへイムと呼ばれる塔のある市街地へと向かう……というお話。

前作の『スーサイド・スクワッド』はDC映画の今後自体に不信感を抱くレベルのグズグズ映画で、後に監督のデヴィッド・エアーが「スタジオに作品をズタズタにされた」と語っている通り監督のビジョンとスタジオの意向が全く噛み合わずにぶつかり合った結果全てが崩壊したような悲惨な作品だったが、今作ではジェームズ・ガンにクリエイティブコントロールを完全にお任せした結果、いかにもガン印の快作に仕上がっていた。

前作を蔑ろにしないで続投キャラなどで目配せもしつつ、同じようにならないような工夫が幾つか見られる。例えば前作でデッドショットを演じたウィル・スミスに代わって登板したイドリス・エルバはブラッドスポートという別人を演じているが、射撃のスペシャリストという能力や娘がキーパーソンという設定はほとんど同じ。ただ、どこかヒロイックな「いつものウィル・スミス」だったデッドショットと違いブラッドスポートはやさぐれた態度をとっていることが多く、娘とは口汚く言い争うなどダーティなキャラ付けをされていて、ある種裏返しのようになっていて面白い。
全体的に、犯罪者と言えど根っからの邪悪ではないというバランス感覚がガン監督ならではで、ピースメーカー(ジョン・シナ)が特に顕著だが、ヤバい一面はあるがその一方で仲間思いの良いところもあり、白か黒かで判断できない曖昧さが人間臭くて良い。
作品の顔とも言えるハーレイクインの活躍が多いのはまあ良いんだけど、個人的にはポルカドットマン(デヴィッド・ダストマルチャン)が好きだったので、彼にももっと活躍の場を設けてほしかった。「武器のプロ」とか「ネズミ使いとか」割と地に足ついた能力が多い中で、一人だけ冗談みたいなダサコスチューム&トンデモパワーを持っており、態度とは裏腹に妙に強いというキャラ設定がツボだった。

ゴア描写や宇宙人スターロのゾッとするような気持ち悪さ、登場人物が戦いの中で容赦なく死んでいく非情さなど、『ガーディアンズ〜』では抑えられていた持ち味が遺憾なく発揮されていて、こういう景気良く人が死んでいくアクション映画を久しぶりに観たこともあって楽しかった。『ガーディアンズ〜3』も楽しみだが、ガン監督にはスタジオへの忖度のなく自由に作品を撮ってほしいなと改めて思える一作だった。


(2021.140)[10]
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