群青

ザ・スーサイド・スクワッド "極"悪党、集結の群青のレビュー・感想・評価

3.9
2021年劇場観賞6作目。
吹替観賞。



ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーで現状最高峰の映画監督の1人となったジェームズ・ガンが一時期マーベルをクビになった時はまさかと思った。
日本でも今年にあった、過去の言動が取り沙汰された形だ。

過去の言動は消すことが出来ない。
だからこそその後の本人の行動だけが、いざ掘り起こされたときに周りが手を差し伸べてくれるかどうかの判断材料となる。
彼はその意味でいうと最大限の行動と結果を残していた。
彼がクビになった時、周りの俳優だけでなく多くの人々が彼を擁護したお陰で彼は再びマーベルに参加することができ、無事にガーディアンズ・オブ・ギャラクシーvol3の監督に再抜擢された。

しかしクビになっている間、まさかのライバル会社のDCが手を差し伸べたのだ。
このニュースも当時びっくりしたものである。
さらにさらにDCからの声かけで作ったのが、あのスーサイド・スクワッドだった。


前作スーサイド・スクワッドは言ってしまうと、ガーディアンズを目指したが批評的には失敗に終わってしまった作品だった。
主人公は皆悪人、そんな悪人揃いのチームが世界を救うというまんまなものだった。
しかしうまく作ることができず、興行的にはまあまあな結果だったが批評的には芳しくなかった。

そんな作品を今度はフォローされた側のジェームズ・ガンがやる…
正直マジかよと思いつつもどんな作品に仕上がるか期待半分不安半分だった。
予告やビジュアルを見るとむしろ、本当にスーサイド・スクワッドなのか?悪い意味でガーディアンズに寄り過ぎて逆に変に言われないか?という不安がでかくなっていった。


結果から言うとジェームズ・ガンらしさはたっぷり、そこにグロテスクと不謹慎ギャグを詰め込んだ毒々しいけど最高!と言わざるを得ない、なんともいえない作品に仕上がっていた。

ストーリー展開が最初からネタバレなので詳細を言えないのが辛いが、マジでド頭から爆笑の嵐。
おまえそんなんだったのか…苦笑、というのが連続されるので見飽きなかった。
監督はさぞ楽しみながら作ったに違いない笑
個人的にオープニングで好きなのはウィーゼルというイタチとTDK。
もう目も当てられない…でも爆笑、という展開でした笑


オープニングで笑わせてもらったのにテンション的にはずっとこの笑いが持続する。今作では主人公的な立場のブラッドスポートとピースメーカーが初対面した時の、俺、お前とキャラ丸かぶりなんだけど!のギャグもさることながら、途中立ち寄った村でいかにいろんな方法で敵を殺せるかを競うシーン。お題目自体が問題なのだが、何せこいつら殺人にかけてはプロなんで、そりゃもう嬉々として殺しを行う笑
特にピースメーカーが寝ている人を襲う一瞬のシーンが大好き。
その時の彼の目線は進行方向にしか向いていない。でも手はきっちり殺しを行なっていて、というよりはむしろ雑という表現の方が適切なんだけど、寝ている人にさくさくナイフを刺していく。呼吸するかのように殺しをするんだけど目線は向こう、というギャップ笑
しかもこのシーンは一連の殺し競争のほんの一部扱いにしかなっていないのでその落差が爆笑モノ。
オチも最高なのでもう全部最高!なのである笑


みんながみんな良いと言う、ハーレイ・クインの花咲き乱れるシーンも良かった。前作はバット使ってたから本当に強いんか?と疑問に思っていたけど、すみません、本当に強かったんですね…笑
個人的にはこのシーンの直前に好きなバンドのThe Fratellisの曲が使われていて嬉しかった。彼らの曲が使われたのはパッと思いつくのでエドガー・ライトのホット・ファズだったなぁとか勝手に感慨深くなっていた笑


敵であるスターロの立ち位置も往年の日本特撮のようで最高だった。実際に英語のセリフでカイジュウと呼んでいるし、樋口監督の対談から察するに特撮もかなり好きな模様。なんだよもう…嬉しいじゃないか!!と自分ごとのような感覚だった。
潤沢な資金のもと、特撮が表現されるのは本当に嬉しい。


スーサイド・スクワッドがどういうものかは前作があるおかげで説明は最低限。あとはキャラ同士の掛け合いで背景や性格を見せていくとというガン監督お得意のスマートさ。変な回想には入ったりしない。
唯一回想があるのはラットキャッチャー2という現代若者感が素敵なキャラ。ついでに吹替は悠木碧で若者感たっぷりのだるい声の感じが素晴らしい。
この唯一回想があるというのがキモになっている。

彼女が抱えている底辺の人間でもそこに必死に生きている、という矜持がチームの一本の芯となっていくのが良かった。

彼ら彼女らは決してなりたくて今の境遇に落ち込んだわけではない。
それは親の虐待や、貧困などの環境が原因で追いやられてしまっただけ。
大事なのは今の自分で何ができるか。
奇しくもそれはマーベルから一度解雇されDCに拾われたガン監督と重なる。
というよりこれは完全に意識して作ったのだろう。
骨を拾ってくれたDCに対してどんなメッセージを送るのか。彼は言葉として言うのではなく、作品でそれをやってのけた。
環境がどうであれ、トラウマがどうであれそこから何ができるかは自分次第。

各々が自らの良心を振り絞って自らの意思で道を選択するシーンは感情を揺さぶられた。

ギャグをやりつつきっちりエモーショナルな展開に持っていくのは流石だなぁと。


今後もガン監督に続編作って欲しいけどマーベルでガーディアンズ3、ディズニープラス配信シリーズが2つあるから無理だろうなぁ…と思っていたらピースメーカーのスピンオフかよ!最高だな!


この作品、グロが沢山あるし笑いのジャンルも不謹慎なものばかりで人を選ぶけど、ハマればシーン毎に最高だな!と頷きまくってしまうので、(何回も書くけど)不謹慎ギャグが許せる人にはおすすめ!!
群青

群青