馮美梅

世界で一番ゴッホを描いた男の馮美梅のレビュー・感想・評価

3.8
以前、NHKの短縮版を見て旦那が「今度は絶対行かなあかんな」と言っていたなぁ。

深圳には行ける時には毎年行っている。今年は前年エアーチケットが取れず2年振りだったが、とにかく進歩のスピードは早い。2年行かない間に、タクシーは電気自動車が主流になっていたり。

そんな深圳の町にある大芬村。
行ったことがあるのかないのかわからない。いつも現地の友人に連れて行ってもらう場所があるんだけど、いつも車やタクシーで移動だし、連れて行かれるままに行くのでどこなのか全然わからないんです。

そこには中国全土から絵描きが集まる。主人公はゴッホの複製画を描いて生計を立てている。月に何十枚、何百枚と…

彼らは何者?自分は何者?芸術家?アーティスト?職人?それは彼ら自身も常に自問自答している。そして外国からの注文にひたすらに描き続ける。

そして、夢だったオランダ、そしてフランスに行くチャンスが巡ってきた。彼らは深圳に住んでいるがあくまでも戸籍は農村戸籍で、深圳の戸籍を取得はできない。きっとそれは彼の学歴も関係するのだろう。そのため、子供は深圳の学校に行くことが出来ず、戸籍のある田舎の学校へ行かねばならずそれもまた切ない。(私の友人達は地方出身だけど、深圳の戸籍を持っているのでこの人たちみたいなことはないんですよね)

夢がある分、それを阻む問題も多い。そして、夢にまで見た本物のゴッホの絵を見るためパスポートとビザを取得し、彼の地へ。まるで子供の遠足のようにキラキラした目で喜ぶ小勇の姿が微笑ましい。

まずはオランダへ。いつも注文してくれるお得意様のお店に向かうが、そこはいわゆるお土産物屋さんだった。小勇は勝手に画廊で販売されていると思っていたのに、お土産物屋さん、しかも販売価格は自分が取引している何倍も高い値段。この時の複雑な表情。自分の腕を認めてもらえていることは嬉しいけれど、一体自分がやっていることってなんなんだろう。そして憧れのゴッホの原画を目の当たりにして、フランスのゴッホゆかりの場所へ行き、お墓参りをする小勇。

帰って、さらに自分が見てきたことを仲間たちと語り、そして彼自身、心新たに少しずつ今まで描いてきた技法でオリジナルに挑もうとする。愛する人、懐かしい田舎の風景。

どれだけゴッホの複製を描いたとしても、ゴッホがその時その作品をどういう感情のもとで描いたのかはわからない。それでもなぜかゴッホを愛し、そこから小勇がこれからどんな方向に進んでいくのか、いまどうなのか、次回大芬村へ行ってみたい。
馮美梅

馮美梅