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世界で一番ゴッホを描いた男の小のレビュー・感想・評価

4.2
中国・深セン市近郊にある、有名画家のレプリカを世界の6割も制作する「大芬(ダーフェン)油画村」。出稼ぎでこの町に来たチャオ・シャオヨンは独学で油絵を学び、20年もの間、ゴッホの複製画を描き続けている。

複製とはいえ制作姿勢は真剣そのもので妥協を許さないから、弟子もなかなか続かない。そんなシャオヨンは、本物のゴッホの絵画を見たいという夢を抱き続け、ついにアムステルダムにあるゴッホ美術館を訪れる。

その前に、自分の複製画を買ってくれているバイヤーのところに行く。画廊のようなところで売られているのかと思いきや…。そしてゴッホの本物の絵画に接したことで、ゴッホとの距離をはっきりと理解する。

「職人の自分はカネのため、芸術家のゴッホは自らの魂のため」。

複製画でゴッホに近づこうとするほど、自らの魂のために絵を描いたゴッホから遠ざかる。

帰国したシャオヨンは、ホントウのゴッホに近づこうと、まずは彼自身ともいえるようなことから描き始める。

模倣は楽だ。サラリーマンであれば人の指示に従うことは楽だ。多分、生存のためだろうけれど、人には「支配欲求」とともに、自分よりも優秀な人、権威あるものに従いたいという「服従欲求」があるらしい。

しかし良く生きるとは、自分にとって「良いもの」を考え抜いて、それを目指して表現することなのだ。心からしたいと思うことを自分なりに追求し、その行為を楽しむことなのだ。“世界で一番ゴッホを描いた"シャオヨンは、このことを掴んだように見えた。

●物語(50%×4.5):2.25
・わかりやすく、悟った人を描いたドキュメンタリー。好き。

●演技、演出(30%×4.0):1.20
・弟子とのやり取りにちょっと緊張。作業場のゴッホの複製画の量が凄い。

●画、音、音楽(20%×3.5):0.70
・よろしかったです。
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