えにし

希望のかなたのえにしのネタバレレビュー・内容・結末

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

難民収容施設で知り合ったマズダックとカーリドがバーで飲んだあとにタバコをふかしながら語り合うシーン。イラク出身のマズダックは1年も施設で身動きが取れないままで発狂しそうだとこぼすが、そんな状況とは裏腹に満足しているように装っていると言う。その理由をカーリドが問うと、暗い顔をしていると真っ先に強制送還のえじきになるから、と答える。俺もニコニコしていた方がいいかな、とカーリドが訊くと、その方がいい、けれど変なやつだと思われない程度にな、とマズダック。あいまいな返答に対して、笑顔でいればいいのか下を見ていればいいのかわからなくなったカーリドに、そのうちわかるさ、とマズダックが続ける。自分と妹を苦境に追いやった信仰を曲げ(埋葬し)、俯き気味に歩くカーリドに対し、どんなに辛い状況に置かれても信心を捨てずに毅然とした態度で前を向いて歩く妹のミリアム。前者は殴られ蹴られ、あげくの果てには解放軍の過激派に刺されてしまう。妹が難民保護申請のために警察に向かうところを見届けたあと、カーリドは川のほとりの木にもたれかかり、ようやく自分の意志で前を向く。川をはさんだ向こう岸にあったのは、美しい街並みだった。前を向いて歩き続ける者には、未来の象徴としての光あふれる営みの街が見える。カーリドはそのときマズダックとのやりとりを思い出し、笑顔の先に、希望のかなたにあるものは未来であるということに気づいたのではないか。そして、妹の行く末に安堵を覚え、犬に微笑みかけたのではないかと思う。
シリアスなときほどコミカルに。ペーソスにはユーモアを。悪意にはやさしさをぶつける。影ができるということは、必ずそこに光もあるということ。"上を向いて歩こう 涙がこぼれないように"とは、まさにこの映画にあつらえ向きの詞ではないか、と思ってしまった。