キョン太

希望のかなたのキョン太のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
3.6
不思議な魅力が満ちてる一本。
40年くらい前のドラマみてるような気分になった。

難民として逃れてきてフィンランドに辿り着き、妹を探す青年のカリード。
そんな彼に手を差し伸べる、人生やり直し系レストランの支配人。

優しい人は優しいし、悪い人は悪い。
理不尽なことは世の中にいろいろあるし、救いの手が差し伸べられることだってある。
そんな風に世の中を淡々と映しながら、急にドでかいワサビを寿司に載せたりもする。
そんな映画だった。

他のユーザーの感想・評価

淡々と進むストーリーに感情表現の少ない役者さん達。なので、あまり感情を揺さぶられる事無く、淡々と終わった。移民や極右グループ(ネオナチ)をテーマに入れているのでもっと見応えがあるのかと思ってました。カウリスマキ監督作品を初めて観賞するのは、多分これでは無かったんだと思う。
いい人達が住むと聞いたフィンランドに流れ着いたシリア難民のカーリド。難民申請は通らず、逃げたして途方にくれていたら、レストランオーナーのヴィクストロムと出会い、いい人ばかりの従業員達と働くことになる。生き別れになった妹を探すが、中々見つからない。見つける事は出来るのか?




ネタバレ↓




まず、あちこち禁煙じゃないのが驚く。室内の至る所でプカプカ。思ってフィンランドと違った。難民申請が通らなかった時に悪い事をしていないのに手錠をかけられるのも驚いた。で、申請も「今は、シリアの情勢が落ち着いているので、認められない」と言われてしまう。その日のニュースで被害が報じられていて、凄い被害なのに…。そして、恐ろしかったのが、フィンランド解放群(右翼グループ)の存在。この人達、難民と解ると直ぐに襲い掛かって来る。容赦無い。本当に存在していると、思うと背筋が凍る。
かと思えば、ヴィクストロムの様にあり得ない程良い人もいる。難民と知ってて雇ってくれ、偽造の身分証明書、住む所、前金、妹を呼び寄せる手筈までしてくれる。他の人達も優しい人達は沢山いて、カリードを助けてくれる。
お蔭で無事妹ミリアムと再会出来たけど、カリードは、右翼グループの1人に腹を刺されてしまうのだった。恐らく、ミリアムは国へ送還されてしまうだろう。カリードもあのまま息を引き取るかも知れない。犬が寄り添ってくれたのは、ちょっと温かいが…。「希望のかなた」は希望の先には何も無いって事なのかな?現実には希望などないって言いたいのかと思いました。
所々、シュールな笑いはあったけど、全体的に暗いイメージの作品だった。
缶詰めのフタを2/3開いて、皿にのせただけの料理やとても寿司とは言えないワサビてんこ盛りのヤバそうな料理。あれは、笑い所だったのだろうか?
そもそもコメディなんだろうか?
嫌いじゃないけど普通かなって思ってしまった。他の作品を観てからだと捉え方が変わるのかも知れないが…。

※カリードが冒頭、真っ黒な石炭の中から登場した時から、何か山田孝之なんだよなあ。そっくりでは無いんだけど…。ずっとなんか山田孝之だった。
えーなぁ。熟練の一本的な。時代も国も全然違うけど小津安二郎感を感じました。
scarecrow

scarecrowの感想・評価

4.0
格好いい映画だなあ。カウリスマキ監督作品2本目だけど好きになってしまう。
役者は一貫して抑えめの演技で淡々と物語は進むけど、難民問題などはシリアスに描く。ハリウッド映画に疲れた時は、こんな映画を見たくなるはず。
Shin

Shinの感想・評価

-
・これ2017年なんだ。30年前の作品と言われても違和感ない
・カウリスマキ作品の世界って初期から変わってないのかもしれない。相変わらずカティ・オウティネンも出てくるし。
・相変わらずストーリーが頭に入らなくてワサビ山盛りのスシとか煙草の投げ捨て方とか居心地悪そうなレストランとかの変な細部ばかり目に残る
・でもフィンランドは難民歓迎で最高の国ですよとも移民排斥国家で最悪だとも言わないところは良かった。
・カリードが面談で面接官に「休みますか?」と言われたのに「なぜ?」と答えるシーンは彼の感情の麻痺が伝わってきて良かった。
・ヘルシンキではシリアから難民申請が通った人とも会ったけど、よく考えると申請に通った人としか会えないのだ。
kazukisera

kazukiseraの感想・評価

3.7
「素敵な荷物が運べた。金なんていらない」

主人公は青年カーリドは、故郷シリアの内戦により妹以外の家族は全て失い、シリアから脱出する際に妹とも生き別れとなり、それからは人生をかけて国から国へと妹を探しながら、フィンランドに密入国を果たした。
もう一方の主人公は、中年のヴィクストロム。冴えない服のセールスマンだったが、妻とも別れ、服の在庫を半値で全てゆずり、少ない資金で潰れかけのレストランを買い取ります。
それぞれの関係のない物語が進みながら交差して、それぞれにほんの少しずつ変化が訪れる。現代ヨーロッパで重要な問題と言える、難民問題をテーマにした物語です。

"家族は全員死んだ。でも耐えて生きてくれ"

「大丈夫。私はママの子よ。死ぬのは簡単。私は生きたい」

現実は、辛く険しい事ばかりだけど
生きてれば悪い事ばかりじゃない
希望が叶わなくとも
思いやりと優しさの連鎖で
心は救われる
愛があれば救われる

「コントラクト・キラー」
を見て、フィンランド「アキ・カウリスマキ」の世界にもう少し浸りたいと思い、そこから27年後の2017年作品のこちらを鑑賞。
まだまだ沢山の作品があるのだが、彼の最も最新の作品を観てみたいと思ったのだ。

それにしても驚いたものだ。27年経っても何も変わっていない。本当に2017年作品なのかこれはと思う。1992年くらいの作品なんじゃないのか。もちろんこれは、いい意味である。
これを観て、コントラクトキラーでは浸りきれなかった彼の世界にゆっくり入っていけた気がする。

どちらの作品にも言える事が、主人公を筆頭に登場人物が全員無表情なのだ。感情が読めない。
なので、悪い人なのか良い人なのか、喜んでるのか悲しいのか、初めのうちは見分けがまったくつかない。

これがまたよいのである。無愛想だから優しさが染み込む。シュールな笑いもちょこちょこ挟んでくるのだが、これがじわじわくるのは全員が無表情だからこそである。この独特なユーモアな作風もアキカウリスマキの世界なのだろう。

あとは、経緯や人物像にしても
とにかく説明的なものを最小限にしている。

何故こんなにも困っているのか
何故こんなにも助けてくれるのか
何故こんなにも恨まれるのか
何故こんなにもうまくいくのか

言い出したらとまらないくらい「何故」は生まれるのだが、なんだかそうゆうのどうでもよくなるんですよね
別に理由なんていらないのかなと。

物語をややこしく見がちだからこそ
「まぁいいか」
そう思わせてくれるとこが
アキ・カウリスマキの魅力かもしれない

フィックス(固定)された画に、無表情の人達、最小限の言葉、独特の間を挟んでから切り替わるシーン
心境や状況をこちらがなんとなぁく想像しながら物語が進んでいくような

終わり方もそう。その後は、ご自由にご想像下さいてなところだ

思えば、同監督作品
「過去のない男」を2014年に鑑賞していた。
あぁ、あれはアキカウリスマキだわ
と今なら言える
みんな無表情だったわ

嫌いじゃないなぁこの監督。
2周回った人が好む作風だと思います。
歳を重ねるにつれ、より好きになりそう
OSHO

OSHOの感想・評価

3.7
シリア内戦から逃げた兄妹の物語。

シリア内戦で家族は死に、妹と2人だけなんとか生き延びたものの、逃亡中に妹と生き別れ、主人公の男がフィンランドまでたどりつき、難民申請するも、却下。
自暴自棄になっていたら、親切な小金持ちに助けられるという物語。

ドラマティックな人生だけど、映画の方はあっさり目に進んでいき、あとからじんわりくるタイプの映画。

小金持ちのレストランオーナーが、「いま流行ってるのは寿司だ!日本食レストランに改装しよう」のくだりの10分くらいは、日本人なら爆笑もの。

ヨーロッパには極右主義のネオナチがまだいて、小汚いアラブ系の顔をした人に(この映画のように)容赦なく暴力を振るったりしているのかも。

シリア内戦、難民問題、ネオナチ…、そのなかでの人々の助け合いを決して重くならずに、軽快に描いてくれている良作です。
静かに、気づかないうちに、でも確かに心の内側に入ってくるような映画
それでいてわさびドーンみたいなシーンいれてくるのほんとずるい
重苦しいテーマをシュールなユーモアで描いていく監督なんだな〜
いつも通り、唐突に始まって、嫌な事が結構あって、いい事が少しあって、何もなかったように終わる(続く)。

優しい気持ちになる。
重くて悲しいドラマのはずだけど、良い意味で気が抜けている。
カーリドの心情や状況はストリートミュージシャンが歌で語ってくれていた。
悪意に満ちたものは確かに存在していて、心苦しい気持ちになる時もあったけど、この映画では圧倒的に小さくとも優しい親切心の積み重ねが心に残るし、そちらの方を信じていきたいと思わせてくれた。
カーリドの事も捨て犬の事も重なり、どちらも平等に扱われている感覚。
外国のお寿司屋さんってそういうイメージあるっていうのを的確に突いてきて笑ってしまった。

[2023年 46本目]
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