Miver2

希望のかなたのMiver2のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.6
移民として生きる厳しさを静かに激しく物語に滲ませながら、ユーモアを交えて絶妙に綴られて行くのが観ていてとても面白かったな。
音楽の使い方もまたとても魅力的で、噛めば噛む程味の出るこの作品。

最初はとても静かで、言葉ではない所で表し描くその展開を観ていて、気がつけば神経が研ぎ澄まされて行くかのように感じた。
そして途中で使われる音楽が語り部になるあの魅力的な面白さがたまらない物があったな。

ある種の現実は過酷で、その厳しさを静かに描く事で感じられる激しさが物語に滲んでいた。
ヒリヒリ、ピリピリではない、何処か尖った鋭さが何気に感じられたような気がした。
そして途中からクラシックな映画の佇まいを感じられるような所があったように思う。
何処と無く小津作品に通じるように感じたし、品のある骨太さがしっかりとあった。

車に乗ってるその姿と光景を前から撮るあのカット割り、最高だもんな。
そしてあのレストランがああいう風に変化して描かれて行くあの面白さは最高だった。
かなり笑った。
そして荷物を運んだ運ちゃんの最後の対応ぶりには観ていてグッと来るものがあったな。
あれ、思わずおおっ!ってなったしね。
厳しくて過酷な現実での人と人の関わりから感じられるその瞬間の数々がとても丁寧に深く描かれていて、面白かったな。

現実の厳しさや過酷ぶりを描きながら、しっかりと希望や優しさが感じられるのが良いなあと。
いろんな人がいるけども、しっかりと向き合ってくれる人達の優しさや温かみ、また別に憎しみや冷たさを剥き出しにする人達の姿だとか、深みのある描き方で観ていてとても楽しめた。
とても研ぎ澄まされた深みのある、ある種の現実を映し出している作品だったしね。
観れば観るほど味わい深さが増しそうだし、ずっとこの先も付き合って行けそうな映画だなと思う。

音楽がある種主役でもあり、時に物語の語り部になっていたのも、とても良かった。
素晴らしい作品でした。
Miver2

Miver2