見て見ないふり。
知らんぷり。
無かったことに。
人間が一番得意なこと。
ある種の防衛本能。
自分が傷つきたくないから、知ってることを知らないことにする。
そんな残酷なことを、暖かく、それでいて乾いたトーンで描くカウリスマキは恐ろしい。
この映画で繰り返されるドアの開け閉めの音。
私にはどこからか聞こえてくる銃声に思えた。
日常的に世間に鳴り響いている銃声を、聞かなかったことにしてはいないか。
「このユダヤ野郎が!」
このセリフを聞いた時ゾッとした。
こんなにも無知なクソ野郎が偉そうな顔してる社会。
一刻も早くこんな社会は終わりにしなければならないと思う。
私たちは分かり合えるはずだ。
とかそんな月並みな寒いセリフをこのレビューで言いたいわけではない。
なんかいいやつだったら、家に泊めてやればいいし、その国に住ませてやればいいだろうと思う。
謎の上から目線で、難民の人を助けてあげようとか言うことほど気持ち悪いことはない。
それこそ、ネオナチのやつらの優生思想に通じる考え方だと思う。
正義とか、正しさとかそういうことを抜きにして、政治とか経済とかそういうことを抜きにして、マイノリティな人たちが草の根で連帯していくことこそ大切なんだ。