ハル

希望のかなたのハルのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.5
アキ・カウリスマキ監督の作る映画には独特の空気がある。そして、弱者を包む優しさがある。

最新作は、そうしたものを踏襲しながら、同時に欧米社会への強烈な皮肉を含んでいた。昨今のトランプ政権に象徴される世界的な右傾化に警鐘を鳴らしたものと思われる。

なので、どちらかと言えば、欧米人に突き刺さる話なのかと思いきや、我々日本人にも刺さる部分はあった。しかも、笑える部分である。それをここで書いても面白くないので、各々が各々の目に焼きつけてください。きっと笑えるから。

アキ監督の日本人へのサービスは私自身、大いに楽しませてもらった。他にも印象に残ったシーンがいくつかある。例えば、おっさんたちが賭けポーカーをしているシーン。カッコよくて洒落ていていつまでも眺めていたかった。あとは主人公の難民が裁判所から通達を受けた後、収容所の窓辺で楽器を弾くシーン。あの何気ないシーンに難民の悲哀がたっぷりと溶け込んでいて切なくなった。


独特の空気と間、行間を埋める音楽、移民問題における残酷な現実と不寛容な社会への批判、そして、弱者に向けられた温かい眼差し、98分の尺の中にこれだけの要素が詰まっている。こんな映画を撮れるのはアキ監督をおいてほかにない。
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