あゆみ

希望のかなたのあゆみのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
3.9
「私がこの映画で目指したのは、難民のことを哀れな犠牲者か、さもなければ社会に侵入しては仕事や妻や家や車をかすめ取る、ずうずうしい経済移民だと決めつけるヨーロッパの風潮を打ち砕くことです」

余韻が凄い。
描かれているのは、今この世界のどこかで生きている人々の現実。
身勝手な理由からシリアでの紛争に加担し、泥沼化させておきながら、難民となったシリア人たちを否定、拒否、見て見ぬふりをするわたしたちを痛烈に批判する。
しかしそれを重苦しいニュースとしてではなく、人々への愛と絶妙なユーモアによって、人間讃歌へと昇華させるカウリスマキ監督のセンスが素晴らしい。
人の痛みに慣れ、無感動になった人間の悲しさと残酷さ、その一方で、痛みと弱さを乗り越え、自分のものすら十分に持っていなくても、他人に差し出せる清廉さと力強さを思った。

シリアというと、紛争や空爆の危険なイメージばかりがつきまとうけど、危険な紛争地域になるためにシリアが存在したわけではない。
10年前には、古代都市のアレッポやパルミラ遺跡など多くの世界遺産を有する美しい国で、当たり前のように、そこで生活する人たちが住んでいた。

シリア、難民と検索したら、トップにUNHCRが出てきたので、一部抜粋。
「私たちができること。それは、悲惨な出来事の連鎖に慣れることなく、紛争下で、今も逼迫した暮らしを強いられている人たちがいること、そういった人たちが日々一人また一人と増えていることを忘れないこと、そして彼らが、どこでどんな助けを求めているのかを考えること。
遠くの国で起きていることだからこそ、考えること。この想像力こそが難民支援にもっとも必要なものではないでしょうか」
あゆみ

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