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希望のかなたのLATESHOWのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.0
カウリスマキの映画を観た後で吸う煙草は殊の外美味い。ポイ捨てはしない笑

「寛容」とは何か。SNSでの共感の数や心温まるストーリーを集めたサイトを閲覧することで「寛容」とは何かを知るのもいいが、まずは困っている隣人に大袈裟でなくただ手を貸すだけで、なんなら無口無表情で構わないし愛想笑いも振りまかなくていいから、とりあえず手助けだけしてみればいい。カウリスマキ監督は愛すべきミニマルな演出にて義理人情の大切さを教えてくれる。ぶっきらぼうと言っていいくらいに、しかし決して突き放さずに。

難民を統計として撮るより個々の人間性を尊重しあわてず騒がず、
彼らの厳しい現状を落ち着いて伝えてくれるストーリー。
一念発起してレストランを手に入れ第二の人生を歩みだす男は
ポンコツ従業員にも難民の主人公にも黙って手を差し伸べる。
従業員らが拾ってきた犬を捨ててこいと口にはしつつも結局は店で飼っている。
主人公の為にいささか危ない橋も渡るし、乏しい知識で日本料理にも挑戦してみる(ワサビ多過ぎ笑)。
避難所では疲弊しきった難民達が、主人公が探す妹のために携帯電話を躊躇いなく貸してくれる。
異国の楽器も「おや、弾けるのかい」と貸してくれる。
街の夜には片隅でロックが歌われ、日本の歌謡曲もたまに混ざる。
ここに世界の「分断」なんかないぜ。
声高らかにメッセージを叫ぶほどこっちもヒマじゃないが
義理人情くらいバッチリ持ち合わせてるぜ。
レストランに飾られたジミヘンのポスターが愛しい隣人たちを見守ってくれている。
ラスト、拾われた犬は主人公の下に店のみんなを導いてくれたはずだろう。

排斥や分断は
映画ひとつの力じゃどうにもならない。
映画は人の情け求むる心の為にある。
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