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希望のかなたのumisodachiのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.1
アキ・カウリスマキ監督作。テーマは移民問題だ。

内戦によって家を亡くしたシリア人のカ―リドは、フィンランドに流れつく。亡命の途中で別れ別れになってしまった妹のことを心配しつつ、難民申請をしてフィンランドでの居場所を作ろうとする。

しかし、難民申請は却下。仕方なくカ―リドは街中へ逃げ出し、レストランに匿われ働かせてもらうことになる。

アキ・カウリスマキ節満載。テーマは重いし、か―リドは街中で幾度となく暴力に晒される。しかし、カーリドを取り巻く人々は優しく、温かい。

カ―リドを匿うレストランのオーナーは、レストラン経営の素人だし、レストランの従業員たちもてんでバラバラ。彼らはやることなすこと行き当たりばったりで、笑わせてくれる。特に、日本料理店にリニューアルしようとするシーンは最高で、ゲラゲラ笑ってしまうこと請け合い。カウリスマキの日本好きが垣間見える。

カーリドの周りの人物たちは言葉少なで愛想はないが、決してカ―リドを裏切らないし、何も言わずに躊躇なく協力する。カ―リドが危険を冒して妹を救出したいと言えば、止めることもなく全力で解決策を考えてくれる。

アキ・カウリスマキの世界はいつもとても優しい。彼の映画の登場人物たちは隣人愛に溢れ、この世界は素晴らしいということを教えてくれる。

しかし、もちろんそれだけではない。
カーリドが置かれている環境は深刻そのものだし、映画も単なるハッピーエンドに集約してくわけではない。

どんなことがあったとしても、人間は愛すべき関係を築くことができる。また、人間としての尊厳は、誰にも決して奪うことはできない。

いつものようにフフフと笑いながら、彼が今、この作品を作らねばならないと考えた気持ちを想像せずにはいられなかった。アキ・カウリスマキの渾身の人間賛歌を、映画館で受け止めることができて良かった。




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