マクガフィン

希望のかなたのマクガフィンのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
3.6
生き別れの妹を探すシリア難民の青年が、レストランオーナーとその仲間と出会い、彼らの善意に救われる人情劇。難民3部作の第2弾。

シリア人難民の主人公(カーリド)は、フィンランドで難民申請をし、はぐれた妹の捜索依頼を出しながら、申請が受け入れられることを待ち続ける。
序盤の駅で警察署の場所を訊ねるシーンが印象的で、難民だと認識した駅員に「正気か?」「良く考えて」と言われることが心に響く。難民申請の許可の険しさがその会話で理解でき、不安が漂う。

EU社会が抱える大きな課題であるタイムリーな難民問題に切り込み、厳粛かつハードルの高い手続きの実情の嘆きと、排他的で外国人を敵視する人種差別の怒りを淡々と独特な間合いで焙り出し、越えなければならない険しい壁があることを提示する。

登場人物の面々は無表情なのだが、助ける理由がないのに救いの手を差し伸べて、情が深く人情味溢れることを描写するは、ヒューマニティについて考えさせられる。
感情表現を徹底的に排除することにより、些かな言動だけで演出する表現方法はカウリスマキならではで、重厚さが高まる。

そんな重苦しくなる作風に、微笑するような軽妙なユーモアを取り入れるバランス感覚は絶妙で、レストランをインチキ日本寿司にするシーンは面白おかしい。上手くいかずに直ぐに辞めることは、日本の難民受け入れの現状を嘆くようにも感じたことは考え過ぎか(実際はユーモア好きと寿司好きからだと思うが、カウリスマキ世界にどっぷり浸かった所以か)。

不寛容になりつつある現状と難民問題をシャープに捉えるが、そのシャープさと相反するような社会的意義をやさしく包むこむことで余韻を残す独特の手法は唯一無二で、妹の難民申請の結果は今後の人々の難民問題や異文化との向き合い方次第と問われているように感じた。