20年以上にわたってオールタイム・マイベストの座にある『コントラクト・キラー』の名セリフ、
「祖国を捨てるのか?」
「労働者階級に祖国はないわ」
から28年(!)、アキが描く世界にブレはない。寂れたレストランに、くたびれた犬に、なにより傷付いた登場人物たち。けれど現実はより過酷になり、そのぶん物語は優しくなっていた。アキ・カウリスマキの映画にだけ許される優しさだった。
引退はその優しさと寛容さのせいなのか。かえすがえすも惜しい。
カティ・オウティネンとサカリ・クオスマネンが老けていた。当たり前だけど。
わたしは間もなく、アキの愛したマッティ・ペロンパーの死んだ年に追いついてしまう。
そんなことにも気付かされる、なにかと心のやらかい場所を締め付けてくる映画だった。