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希望のかなたのslowのレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.0
その港の風景にはどこか見覚えがあった。『かもめ食堂』の舞台にもなったヘルシンキのそれだったからかもしれない。しかし、カウリスマキ映画のゆるさは、荻上映画のそれとは似て非なるものだと改めて思う。
カウリスマキ映画は、虫も殺さない空気感でシビアに生きるか死ぬかの瀬戸際を描く。登場人物に鞭を打ちしっかりと難壁に立ち向かわせ、局面を乗り越えられるかどうかを試すスパルタっぷり。一体どんな顔でそんなこと、と顔をみると、「大丈夫、私もちゃんと付き合うから」という顔をしてカメラの後ろで酔っ払っているのである(多分)。実はツッコミたくなるような御都合シーンも多いのだけれど、だからと言って作品が破綻してしまわない許容範囲の広さがある。これが、とにかく広い。もしかしたら、それこそが彼の作り上げてきた強みであり、観客を魅了し続けている理由のひとつなのかもしれない。
カウリスマキのカメラは映画を通して、世界中の一人一人へと向いている。
同じ北欧の血統を持つベント・ハーメル映画もいいけれど、本作は決して自己満足映画などではないし、人々は誰でもこの物語のキャストになる可能性があることを謙虚に伝えようとしている(多分)。
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