淡々とした描写で、淡々と事実を描くアキ=カウリスマキのシリア難民もの。でも、中身はハリウッド式でもなく、展開も予想通りでないところが、この監督らしくていい。
カメラも移動しないし、ズームやパンもしない。そして誇張しない。
だが、移民排斥者や、難民を排除するためのシステムや密入国防止に軍隊が絡んでいたりなど、怖い部分も誇張せずに触れている。
だが、命がけで密航してきた主人公の登場シーンからしてコミカルで、ところどころに出てくる演奏にはペーソスもある。
こういう、他にはない映画がカウリスマキの特長だ。
あえていうならジム=ジャームッシュ監督の『パターソン』に似たリズムだ。
問題提起を声高にするわけでなく、ちょっと微笑ましいところがいい。
「絆」など強制的なものでなく、ちょっと助けになるつながり。
その深刻さがないところや、ユーモアが「希望の光」なのだろう。