映画漬廃人伊波興一

希望のかなたの映画漬廃人伊波興一のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
4.3
どんな好物でも外食ばかりじゃ身が持たない。多少、嗜好から外れようとも手料理なら毎日、飽きずに食える。それがカウリスマキの味と言えると思うのです。
アキ・カウリスマキ「希望のかなた」

約20年前、テレビ畑で働いていた知人と有楽町の喫茶店で話していて、私がカウリスマキの「浮き雲」の魅力を知ってもらいたく薦めました。
後日、彼は「あれくらいの作品なら俺だって撮れるよ。既に学生のころに何本か撮ってるよ」と申しました。
その知人にそんな才能があったのか、と秘かに嬉しくなった私は
「あの映画の余韻をお前の作品から味わえるなら絶対に観たい!たとえ自主映画でも俺が私財を投じて一般公開の協力をするぞ」と申しました。
私は本気でそう言ったのです。

知人とはそれから付き合いが疎遠になり、20年近く経ちました。
結局、作品をついに観ることないまま今に至っております。
今、地方のテレビ局で番組製作のチームらしいですが、
この傑作「希望のかなた」を観た後にふと、思い出しました。

もし周りの誰かが、この「希望のかなた」を誉めていたとしても
「あれくらい俺だって撮れるよ」なんて言ってるのかなあ・・・