松瀬研祐

希望のかなたの松瀬研祐のレビュー・感想・評価

希望のかなた(2017年製作の映画)
3.8
美術の色使いや照明は相変わらず色鮮やかで目に楽しい。

ただ、難民三部作の二作目として作られた作品の、物語そのものは息苦しさが感じられる現代の作品。

紛争地域からフィンランドに逃れた青年役の語る逃亡の経緯が重い。逃れてきたフィンランドの地でも差別にあいながら、たどり着いたレストランのオーナーたちに助けられて、離れ離れになった妹と再会する場面に救われる。逃亡の手助けをしてくれた男と「(報酬は)いくらだ?」「(妹のこと)こんな素敵な運びものに金はいらない」という二言で会話が終わり、あとは煙草を吸うだけの描写に痛快さを感じる。

政府のものなのかテロ組織のものなのかもわからぬ爆撃で家族の全てを殺された兄妹が、流れ着いたフィンランドの地で生きていこうと決意し、「死ぬのは簡単。でも私は生きる」と妹が語る言葉の重さは計り知れない。そんな中、悲劇として幕が降りる間際に犬が救いとして現れるカウリスマキ節も堪能。
松瀬研祐

松瀬研祐