希望のかなたの作品情報・感想・評価 - 127ページ目

「希望のかなた」に投稿された感想・評価

燕鷲

燕鷲の感想・評価

4.5
社会の片隅に生きる人々のユーモアとペーソスをヘタウマ調で歌い上げてきたカウリスマキの新境地。

寂れたレストランというお馴染みの舞台で展開される悲喜交々は真骨頂であり、ヴィクストロム(サカリ・クオスマネン)と仲間たちの醸し出すオフビートな笑いの数々は観る者にささやかな幸福を与えてくれるだろう。

しかし……。

それでも“希望”を描いてみせた前作『ル・アーヴルの靴みがき』から数年。
たった数年の間に、世界は変わった。そんな世界を目の当たりにして、きっとカウリスマキも変わったのだろうと思う。
最新作『希望のかなた』で提示されているのは決して“希望”だけではなかった。

入国管理局でカーリド(シェルワン・ハジ)が難民申請に至るまでの経緯を口にするシークエンスは出色の出来。
相変わらず無駄のないシンプルな作りなのだが、だからこそ“希望”の裏にある“失望”や、難民と呼ばれる人たちに待ち受ける“現実”の過酷さがひしひしと伝わってくる。
喫緊の問題に立ち向かわんとするカウリスマキの真摯な姿勢と強い意思表示が、この“苦味”と終盤のあの衝撃に現れていた。
サ

サの感想・評価

5.0
主演の人がほぼ山田孝之。完成度だけならルアーヴルの靴磨きの方が上かな、でもこれはこれでグッとくる特別な良さがありました。
@ユーロスペース

難民問題という重いテーマを扱いつつも、ぶっきらぼうで無口な登場人物たちがユーモアと素敵な音楽とてんこ盛りのワサビでそれを乗り越えようとするカウリスマキの映画は、紛れもなく確かな希望です。
saeta

saetaの感想・評価

4.2
封切後の最初の週末だったので、やや混んでた気がする。
相変わらずの日本びいきで観ながら嬉しくなってたが、音楽も良いし、毎度象徴的な存在の犬も出て来ており、安定のカウリスマキクオリティだったと思う。
kocha

kochaの感想・評価

3.7
これは勉強になった。というより勉強するきっかけを与えてくれた!難民認定の申請が殆どリジェクトされている現実や、オーディンの戦士たちの様なネオナチの台頭だったりとEUの難民問題を色々と調べてしまった。
ただ内容は、無口なフィンランド人らしさとユーモアと音楽というシンプルな味付けというので、カウリスマキリピーターの気持ちも分からなくなかった。
もしかしたら、カウリスマキ最後の作品かと思うと、寂しくなる。

国の規則だからとか、ルールだからとか、どうにもならないことを前にして、多くの人は大きな声で文句を言ったり、あがいてみたりはしても、結局力尽きて諦める。

しかし、何かの本で読んだけれど、目の前の理不尽な問題にたいして、いかにして抜け道を探すかということがとても大切なんだと。

この映画では、その抜け道を、温かい周りの人たちが用意してくれていた。

そして、支配人は、目の前で助けを求めている人に対して、とりあえず、自分ができることをやってあげていた。

そして、店のことにしても、これがダメなら次はこれと、めげずに前に進んでいた。

相変わらず、誰もが皆ポーカーフェイスなんだけれど、優しさはいつも、机の上の一輪の花のように、そこに咲いていた。

いつもの映画以上に、音楽がそこかしこにあり、その中でも特に、「歌を歌うか、死ぬか、どっちかだ」みたいなフレーズが、胸に残った。

今この時代を生きる私たちへの、応援歌のような映画だと思った。
mito

mitoの感想・評価

3.9
アキ・カウリスマキ監督最新作。
シリア難民のカーリドはたまたま乗り合わせた貨物船に乗ってフィンランドに辿り着く。
難民登録を申請しフィンランドで過ごすカーリドだが、生き別れた妹の行方を必死で探す毎日。
所変わって、ある夫婦が別居する事に。夫は稼業のシャツ販売を畳み、レストラン経営を始める事を決意する。

前半はカウリスマキ監督のライフワークとも言える移民、難民問題を主軸に置いた話。
このテーマを描きたい気持ちが日に日に強くなっているのか、この人の作品って歳を重ねる程、話がまとまるという不思議。

昔の方が無茶苦茶やってたよな。
後半、特にレストランが舞台になってからは無茶苦茶感が強くなってきて、日本好きの悪さ(笑)が出て来たりと笑えるシーンが増えてくる。

カーリドも含め、中東難民勢は比較的表情豊かでカウリスマキアクター感は弱い。
終盤出て来る妹やレストランの店員は表情少なく正にカウリスマキアクター。

面白いけど、昔のハチャメチャやってるカウリスマキ作品も少し恋しくなった。
rollin

rollinの感想・評価

4.9

このレビューはネタバレを含みます

希望のかなた、観たネン。

カウリスマキ監督の画集のページをめくる喜び。35mm上映。心に必要なやつ。

山田孝之こと主人公カーリドの登場シーンからもう最高で、ゴールデンパインの従業員の個性と連帯感や、監督の愛犬ヴァルプという最強の飛び道具、そして日本文化に理解があるからこそ狙える草履の履き違え(日本の書店のブックカバーを付けたまま陳列するというセンス!)など、ユーモアは止まりまへん。あとあのめっちゃ臭い魚の酢漬けのやつ!
つまりはいつもの監督の世界観なんやけども、カーリドを取り巻くシリア内戦や難民問題を描くシーンはとても繊細で、だからこそ敢えて独立させているような、映画の構成要素としてもそれらは難民的なポジションだったような印象やネン。

レストラン=カウリスマキ監督の世界は不器用で朴訥なやさしさに溢れているけど、カーリドはそこでも難民であることに変わりは無いし、そこからも逃れようとする。
それでも監督は「ステキな物を運んだから金は要らない!」なんて台詞をこの期に及んで言わせるのです。それでも!
‥‥もう好きしかない。

印象的なのは、難民保護施設で弾いた小さいシタールみたいな楽器の指板と、カーリドの繊細な指使い。
フィンランドの、身も心も声もギターも経年変化したビザールでグッドルッキンなローラーたちの、絞りカスのようなコクのあるサウンド。
道具や国は違えど、両者の奏でる音楽は台詞以上に雄弁に、感情の浜辺にメランコい波を寄せる。

ラストは奇しくもカウリスマキ2049で、カーリドのK、もといカウリスマキ監督のKだったのネン。
Miver2

Miver2の感想・評価

4.6
移民として生きる厳しさを静かに激しく物語に滲ませながら、ユーモアを交えて絶妙に綴られて行くのが観ていてとても面白かったな。
音楽の使い方もまたとても魅力的で、噛めば噛む程味の出るこの作品。

最初はとても静かで、言葉ではない所で表し描くその展開を観ていて、気がつけば神経が研ぎ澄まされて行くかのように感じた。
そして途中で使われる音楽が語り部になるあの魅力的な面白さがたまらない物があったな。

ある種の現実は過酷で、その厳しさを静かに描く事で感じられる激しさが物語に滲んでいた。
ヒリヒリ、ピリピリではない、何処か尖った鋭さが何気に感じられたような気がした。
そして途中からクラシックな映画の佇まいを感じられるような所があったように思う。
何処と無く小津作品に通じるように感じたし、品のある骨太さがしっかりとあった。

車に乗ってるその姿と光景を前から撮るあのカット割り、最高だもんな。
そしてあのレストランがああいう風に変化して描かれて行くあの面白さは最高だった。
かなり笑った。
そして荷物を運んだ運ちゃんの最後の対応ぶりには観ていてグッと来るものがあったな。
あれ、思わずおおっ!ってなったしね。
厳しくて過酷な現実での人と人の関わりから感じられるその瞬間の数々がとても丁寧に深く描かれていて、面白かったな。

現実の厳しさや過酷ぶりを描きながら、しっかりと希望や優しさが感じられるのが良いなあと。
いろんな人がいるけども、しっかりと向き合ってくれる人達の優しさや温かみ、また別に憎しみや冷たさを剥き出しにする人達の姿だとか、深みのある描き方で観ていてとても楽しめた。
とても研ぎ澄まされた深みのある、ある種の現実を映し出している作品だったしね。
観れば観るほど味わい深さが増しそうだし、ずっとこの先も付き合って行けそうな映画だなと思う。

音楽がある種主役でもあり、時に物語の語り部になっていたのも、とても良かった。
素晴らしい作品でした。
前半は正直なところ退屈してしまいましたが
後半は“ささやかなユーモア”が入ってきてそれなりに楽しめました。

そして全体的には主人公に対する
周囲の人間達の“慎ましい優しさ”が点在。

もしかすると後半に入ってくる
“ささやかなユーモア”も観ている人に対する
監督の“慎ましい優しさ”なのかも。

2017年12月に映画館で鑑賞。