希望のかなたの作品情報・感想・評価 - 5ページ目

希望のかなた2017年製作の映画)

Toivon tuolla puolen/The Other Side of Hope

上映日:2017年12月02日

製作国:

上映時間:98分

4.0

あらすじ

内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランのオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手を差しのべ、自身のレストランに雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた行きづまっ…

内戦が激化する故郷シリアを逃れた青年カーリドは、生き別れた妹を探して、偶然にも北欧フィンランドの首都ヘルシンキに流れつく。空爆で全てを失くした今、彼の唯一の望みは妹を見つけだすこと。ヨーロッパを悩ます難民危機のあおりか、この街でも差別や暴力にさらされるカーリドだったが、レストランのオーナーのヴィクストロムは彼に救いの手を差しのべ、自身のレストランに雇い入れる。そんなヴィクストロムもまた行きづまった過去を捨て、人生をやり直そうとしていた。それぞれの未来を探す2人はやがて“家族”となり、彼らの人生には希望の光がさし始める…。

「希望のかなた」に投稿された感想・評価

乾いてたな。このリズム、いいよね。音楽も色も演技も表情も味がありすぎる。
純

純の感想・評価

4.4
絶望だけが世界じゃない。曇り空の下、暗闇の中ではほんの少し正義も愛も優しさもぶっきらぼうで、でもちゃんと私たちに寄り添ってくれている。私たちは皆ひとりだけど独りぼっちではなくて、嫌なことも悲しいことも全部背負いながら、ずっと信じている希望をお守りにしているね。

会話も色彩もすべて控えめ。シリアからヘルシンキへやってきたカーリドと、商売が行き詰まって奥さんとも別居することになったヴィクストロムというふたりを軸に、この物語は進んでいく。難民申請の実状はこんなにも厳しい。どこまで故郷が破壊されたら救済の対象になれるのか。どれだけのひとが傷を負って、その命を落とせば危険地区と認定されるのか。当たり前の保護を受けるのに、一体どれだけの辛抱強さが求められるんだろう。一刻を争う状況下で国の理解が得られず、融通の効かない不平等さと自分の非力さを痛感することの歯痒さ、不甲斐なさと言ったらないよね。差別が当然のように存在して、誰かが誰かを傷つけ、やり場のない悲しみや怒りが蔓延するいたたまれなさ。

正義とか愛とか優しさとか、結局知れたものなのかな。どうしても消えないそんな諦めの気持ちが、この映画を観終わった頃には驚くほど浄化されている。濁って固まった気持ちがすーっと溶けていく。もちろん難民の前に立ちはだかる問題の数々は真っ直ぐに見つめている作品だから、現代の私たちに問題意識を持たせてくれたままで。苦さをきちんと残して、でも絶望だけが世界じゃないって、そう教えてくれる。もちろん悪いひともいれば分かり合えないひともいる。世の中には驚いてしまうくらい意地悪な行いが沢山あって、でもそれと同じくらい、優しさを分け与えたいという気持ちを忘れないでいてくれるひともいるんだよね。見えないだけで。絶望のかなたには希望があって、その希望のかなたには、いったいどんな光が見えるのかな。光があることを、根拠なく信じていたいよね。

皆何かを怖がっている。差別や意地悪に慣れてしまったからこそ、自分がその対象になったらどうしようと怯えてしまって、加害者側に回ることで自分を守っていた。カーリドを刺したひともさ、別に殺す気なんてなくて、行き場のない恐怖を葬りたかったんだろうな。自分は弱くない、自分は強いから大丈夫だって。ざまあみろって、カーリドにじゃなくて、自分を苦しめる姿形のない恐怖心に向かって言っていたんだろう。でも、立ち向かうっていうのはそういうことじゃない。誰かを傷つけて自分を守るのは弱い証拠。卑怯なやり方だって、本当はわかってるはずなのになあ。わかっていても屈してしまうそんな世界が、少しずつ優しい温度を取り戻していけたら良いな。多くの人が負けてしまうその心を優しく抱きしめてくれるひとが、それぞれにいつか現れますように。

難民を取り扱った作品として深刻さと生々しさ、報われなさを描くと同時に、人々が大切に仕舞っている優しさを信じさせてくれるこの作品、ユーモアの利き方も最高にセンスがある。ヴィクストロムとその従業員たちがお寿司のお店を開くときのわさびの量、あれ本当に可笑しくて笑いをこらえるのに必死だった。体当たりでぶつかって、けちょんけちょんにされて、また立ち上がって。なんだか勇気がもらえるよね。自分の持つ悩みが消えるわけではないけど、ようしもう一度頑張ってみるか、っていう気楽さがふっと蘇る。そして案外、生きていくうちで大事なことって「何とかなる」こと自体じゃなくて、「何とかなる気がする」ってことだったりするんだなあなんて思ったり。

この映画で描かれる、これだけの不遇なのにひとを信じて頑張れる人柄の良さは、もしかしたら偽物かもしれない。所詮映画だからね。でも、カウリスマキ監督が自身最後の作品として作り上げた、たったひとつの映画なんだよね。実際に存在する優しさなのか、監督の縋っていたい希望なのかはわからないけど、この映画を観ていると、このひとたちと同じ色彩の優しさが、自分の内で密やかに共鳴するような、そんな気がするのがこそばゆく、嬉しい。積極的に守ってあげよう、助けてあげようっていう精神なんじゃなくて、その存在をきちんと受け入れてあげる姿勢が整っているから。難民やホームレスのひとたちは、平等な国として描かれているフィンランドでさえもやっぱり誰かの助けがないと生活していけなくて、でも街の人たちも不景気な中では他人の世話をするほどの余裕はない。そんな中で見て見ぬ振りをするんじゃなくて、きちんと気にかけることをしてあげる、恵まれない境遇に寄り添ってあげる眼差しが、本当に慎ましくて温かい。問題は山積みだけど、私たちは希望のかなたに向かって今日も何とか生きていくし、明日も明後日もその先も、そうやってずっと続いていく。
moku

mokuの感想・評価

3.9
重いテーマを扱っているにも関わらず、劇中の音楽や笑いあり涙ありの人との関わりがあればこそ、見終わった後もなにか暖かいものが心の中に残る。

たくさんある人生の中の、とある視点のとあるカットを切り取って見せているような、そんな映画の一つ。

人生は続くよどこまでも

それにしても
タバコめっちゃうまそうに吸うなあ
以前から変わらぬカウリスマキ監督の語り味と、移民青年の「若く強い眼」の相性が意外と良く絶妙である。
keiyu

keiyuの感想・評価

4.3
クールなテンションで押し通しながら
核となる難民問題(主に中東)が日常に影を落す

それなのに
深い感動は観客の見方に委ね
笑いをしっかりと映す

鑑賞後すぐにでも冒頭から見直したいのに
もう上映館が少ない…

チェックはしてたが、今度みようを繰り返した自分が情けない
やっとカウリスマキ作品を映画館で観ることができた
相変わらず良かったです
Keiji

Keijiの感想・評価

3.8
主人公の難民体験を描いており、一貫して重い。だが、この重さを壊さない程度のユーモアがところどころ散りばめられている。作品の持つ重さと笑いが絶妙なバランスで保たれている。
Megumi

Megumiの感想・評価

4.2
アキ・カウリスマキの静かで優しい映画。難民が受けている残酷な現実を淡々と描く。彼らに対する差別があることも見せて、それでいて彼らに手を差し伸べる優しい人々がいる。最後の方の運送屋のおじさんのセリフが泣かす。

コイスティネン、マジでかわいーーー!!
そして、わさび乗せすぎだからー。
20年以上にわたってオールタイム・マイベストの座にある『コントラクト・キラー』の名セリフ、

「祖国を捨てるのか?」
「労働者階級に祖国はないわ」

から28年(!)、アキが描く世界にブレはない。寂れたレストランに、くたびれた犬に、なにより傷付いた登場人物たち。けれど現実はより過酷になり、そのぶん物語は優しくなっていた。アキ・カウリスマキの映画にだけ許される優しさだった。
引退はその優しさと寛容さのせいなのか。かえすがえすも惜しい。

カティ・オウティネンとサカリ・クオスマネンが老けていた。当たり前だけど。

わたしは間もなく、アキの愛したマッティ・ペロンパーの死んだ年に追いついてしまう。
そんなことにも気付かされる、なにかと心のやらかい場所を締め付けてくる映画だった。
レストランの壁のジミヘン
ショボショボの犬
スシレストランの最初の客層

淡々とした中にもクスりとなりました。
みんな仏頂面だけど押し付けない優しさ。