MasaichiYaguchi

single mom 優しい家族。 a sweet familyのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

3.5
北海道ニセコ町を舞台に内山理名さん主演で松本和巳さんの監督&脚本で映画化された本作で描かれるのはシングルマザーの厳しい現実。
この作品を観ていると昨年公開されたケン・ローチ監督の「わたしは、ダニエル・ブレイク」を思い出してしまう。
この作品のキャッチコピーは「人生は変えられる。隣の誰かを助けるだけで。」だったが、本作にも同じニュアンスで有島武郎の「相互扶助」という言葉が出てくる。
ただケン・ローチ監督は弱者同士の助け合いは必要だが、それにも限界があることをシビアな現実の中で浮き彫りにしてみせた。
本作では空愛美とエミリーの母子家庭が、仕事が見付からず貯金を切り崩して糊口を凌いだり、夫・父親不在という引け目からの孤立感に苛まれる日々を胸が締め付けられるようなタッチで描く。
厳しい状況の中いくら頑張っても泥舟を漕ぐような仕儀になってしまう虚しさ。
そのような弱者が最後に頼るのが国や地方自治体になる訳だが、「わたしは、ダニエル・ブレイク」では、財政困難という理由で官僚主義的に切り捨てていく非情さを〝怒り〟と共に描いている。
本作にも、如何にも役所的な人物が登場するが、タイトルに〝優しい〟が付いているように厳しい状況下の母子に救いの手を差し伸べる人々が登場する。
そして本作はシングルマザーのリアルを浮き彫りにしていると共に、そこに母と子の情愛を現在と過去を並行して描く中で温もりを醸し出していく。
母子に対して優しさを滲ませるダニエル・ブレイク的役割ながら、タイプは違って、つっけんどんで人嫌いの大西鉄ニ役の木村祐一さんが印象的だった。