次郎

すばらしき映画音楽たちの次郎のレビュー・感想・評価

すばらしき映画音楽たち(2016年製作の映画)
4.6
音楽は映画監督が苦手とする分野で、監督が撮影編集を行っても作曲を行う事はまずないという指摘は納得。映画音楽史の流れも興味深く、最初期のサイレント時代でも映写の雑音を消すために音楽が必要とされたという話だけで面白い。
1933年代の『キングコング』は映画音楽にクラシックを持ち込んだことが革新的であり、51年の『欲望という名の電車』では初めてジャズが取り入れられた。そして62年にリリースされた「007のテーマ」は、映画音楽にビッグ・バンドという選択肢を与えた事が画期的であり、60年代から70年代にかけてのオーケストラの解放という変革を促すが、映画音楽史に残る天才、ジョン・ウィリアムズによるオーケストラ作品がまた全てをひっくり返す…。
『ジョーズ』や『スター・ウォーズ』、『インディ・ジョーンズ』から『E.T.』に至るまで、あの時代のハリウッドヒット作の大半をウィリアムズが手掛けていたという事実には本当に驚かさせられた。本作を観ていると、自分たちが映画に対して感じる感情は大部分が音楽に規定されているのでは思ってしまうほど。
そしてウィリアムズ以降、現代の映画音楽で最高峰に挙げられるのがオーケストラと電子音楽の境目を消したハンス・ジマーなのは予想通り。彼の音楽センスに疑う余地はないのだけど、あの靴下のセンスは何なの。
とにかく、本作を観た後では映画の見方が確実に変わってしまう。映画体験として稀有な余韻を残す傑作ドキュメンタリー。