向いている人：
①映画が好きな人
②映画の成り立ち、メイキングに興味がある人
③できれば『スター・ウォーズ』『ショーシャンクの空に』『グラディエーター』『ソーシャル・ネットワーク』『タイタニック』を見ている人
音楽を聴くと、その映画を見たときのことを思い出しますよね。そんな映画音楽のありがたさが分かるドキュメンタリーです。フォロワーさんがレビューされていたのにつられて、アマゾンプライムで配信されているものを見てみました！
逆に、映像技術の方に関心がある人は、キアヌ・リーヴスが様々な映画監督にインタビューするドキュメンタリー『サイド・バイ・サイド』を見てみてください！
最初に登場するのは、『スクリーム』や『ターミネーター３』の音楽を担当するマルコ・ベルトラミ。周りにコンビニもなければWiFiも通ってなさそうな場所に行って、「いい音を探している」というんです。そこまでこだわるか！！
この映画は、名だたる映画音楽家、映画評論家、音楽プロデューサー、脳科学者などのインタビューを織り交ぜて、映画における「音楽（ここではサントラのことです。）」の成り立ちの歴史と、作曲の裏側、そして映画音楽家がどうやって映画に参加し、何を思って作曲に臨んでいくかという心のひだまで見せてくれるドキュメンタリーです。
それこそ、一度は見たことがある、聞いたことがある音楽を担当した人もたくさん出てきます。ジョン・ウィリアムズはもちろんのこと、
ハンス・ジマー『グラディエーター』『トランスフォーマー』
ダニー・エルフマン『バットマン』
ハワード・ショア『ロード・オブ・ザ・リング』
エンニオ・モリコーネ『続・夕陽のガンマン』
といった重鎮もいますし、
ジャンキーＸＬ『マッドマックス／怒りのデス・ロード』
ベアー・マクレアリー『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』
タイラー・ベイツ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』
ブライアン・タイラー『ワイルド・スピード スカイミッション』
など、最近イキのいい作曲家も登場します。
さらに、数々の映画の映像を交えて、音楽があるのとないのとではどう違うか、同じ旋律の音楽でも鳴らし方を変えるだけでどういう効果があるかということを見せてくれるので、映画音楽のありがたみが分かります。
たとえば、ヒッチコックの『サイコ』のシャワーシーン。あの「ジャン！ ジャン！」という音楽があるのとないのとでは、ショックの大きさが全然違います。バーナード・ハーマンが天才！と思うとともに、音楽の偉大さを痛感します。
「ラッパがいっぱい付いたやつ」とか、普段お目にかかれない楽器も登場（すみません、語彙がなくて……。誰か名前を知っていたら教えてください汗）。
一方、作曲家のスタンスとして、あのハンス・ジマーが「作品のアイデアを聞いて『やるよ！』と言っても、みんなが帰ったあと一人で悩むんだ。『どうしよう、ああ言ったけどどうすればいいか分かんない』とね」とコメントします。ハンス・ジマーでさえ、それぞれの作品のお話を聞いたときは、ゼロからのスタート。そこからあれだけの素晴らしい音楽を組み立てるんですから、ハンパなき才能とセンスですよね！
そして、大事なことを、ジャンキーＸＬが言ってくれます。「自分にガツンと響く音楽ができるまでやり続けるんだ。でないと、観客の心に届かないからね」と。私たちが普段見ている映画の音楽は、音楽家が自分でカッコいいと思えるまで磨きに磨き上げた作品なんだな、と思いました！
制作の裏側として、スタジオの利用時間の制限があるから練習があまりできないとか、ミキシングの光景とか、曲が完成する前に宣伝が始まってプレッシャーを感じるとか、普段映画を見ているだけではわからない裏側も見られます。
もちろん、楽譜の音符の一つ一つ、作曲家の頭の中だけで鳴っていた音楽が、スタジオの演奏家たちによって形になる瞬間の驚きと、喜びも見せてくれます。
出来上がった音楽が観客の心に届いたのか？ ある作曲家は劇場で一緒に映画を見て確認します。そして次に生かす。やはりモノ作りは、努力と検証の繰り返しなんですね。
誰もがジョン・ウィリアムズの偉大さにコメントする事実に、当然と思う一方、やはりこの人はすごいんだなと実感しました。
欲を言えば、せっかくたくさんの音楽家が出ているんですから、『アベンジャーズ』のアラン・シルベストリとか、『ヒックとドラゴン』のジョン・パウエルとか、『キングスマン』のヘンリー・ジャックマンも見たかったな……と思いました。
最後に、ハンス・ジマーの言葉を。「自分は、曲の中で自分をさらけ出しているんだ」。いつの世も、人の心を打つのは、人の心なんですね。
