踊る猫

ジョシュア: 大国に抗った少年の踊る猫のレビュー・感想・評価

4.5
唸らされてしまった。ジョシュア・ウォンは決して逞しそうな「野郎」ではない。メガネを掛けて痩せっぽちの、大人しそうな男だ。彼の何処にかくも大きな革命(と呼ぶのは過褒でもなんでもないだろう)を巻き起こせるだけのパワーが備わっているのか……このドキュメンタリーでしばしば「未来」が語られるのが私の耳を惹いた。「未来」。それは、明るい未来は今の行動でこそ手に入ると信じることを意味するのだろう。ではその信念は何処から。それはこのドキュメンタリーを観ただけではわからないのだが、あるいはそんな無根拠を信じられるだけの力をこそ若さと呼ぶのかもしれない。それは一歩間違えればただのロマンティシズムに終わるだろうが、この作品のジョシュアはどんな時も冷静で、己の信念を語る言葉を備えている。エモーションに逃げず、言葉で理路整然と相手の論理の誤りを指摘する。彼らを「まだ若いから」と言って嗤うことは出来なくなってしまった。「若いから」……この言葉で彼らを批判出来ると信じるなら、それこそ私の方が脳天気な現実逃避に陥っているのだから。
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