松瀬研祐

聖なるものの松瀬研祐のレビュー・感想・評価

聖なるもの(2017年製作の映画)
3.5
監督志望の映研の学生役(これを実際に岩切監督自身がやられている)がカメラをまわす擬似ドキュメンタリー形式で映画は進み、途中から、撮影された映画のシーンが挿入される。基本軸となるドキュメンタリー風のPOVは生っぽく、繋ぎ方も刻むような映像だけど、映画シーンはそれとは異なるルックでカット割りもだいぶ変わる。そして、場面ごとにその劇映画パートの撮られ方も変化する。劇いくつものカメラで撮られたルックの異なる映像が、心地いいテンポでつながれていく。


ドキュメンタリー的な手法がどこまで計算されているのかわからないものの、映画の中盤、監督を罵倒して現場を去る女優(兼AD)の横を、スピードを落とさずに通り過ぎていく車の絶妙なタイミングと強烈な音(おそらくMAで意図的にボリュームをあげたと想像する)が心地いい。狙った画なのか偶然なのかはともかく、あの劇的な瞬間がきちんと存在する映画であること。そして小川紗良さんは素敵な俳優だなぁと思う。


片方ずつのイヤホンで音楽を聞いていた女子。一人の女子が、相手のイヤホンを取って自分の耳に当て、その瞬間に音楽が流れだす場面の心地よさ。ああいうミュージックビデオ的な感じというのは、不思議だけど、それだけでなんだかかっこいいなぁと思ってしまう。


クライマックスの海のシーン。空半分。砂浜半分。水平にみえる地面の上を監督と主人公が立っているのに、波がしっかり見える。あのカメラ位置と距離感。手持ちカメラの揺れがなくなって、一枚の絵画のようにみえた。あの画がとても良かった。
松瀬研祐

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