TakaCine

女と男の観覧車のTakaCineのレビュー・感想・評価

女と男の観覧車(2017年製作の映画)
3.6
【ブランチの面影】
"ブランチ"とは「欲望という名の電車」の主人公ブランチ・デュボアのことです。

ウディ・アレン監督が意図的に女性の登場人物の中に、ブランチを想起させるイメージ(面影)を埋め込んでいるようでした。

そのイメージとは「後悔」と「幻想(渇望)」に苛まれる姿。今の自分を否定し、(愛で)救済されることを待ち望んでいる姿。やがて待ちきれず、壊れてしまう女性の姿です。

構造も『欲望という…』に似ています(以下、「電車」と記します)。
・主人公を苛立たせる騒音(「電車」は路面電車、「観覧車」は遊園地)
・初婚の痛手を引きずっている
・男との感性が合わない(「電車」のミッチ、「観覧車」のハンプティ)
・キャロライナの登場シーン、ジニーの着飾った姿でのダイアローグが「電車」にそっくり

抜け出そうにも抜け出せない地に降り立ったブランチ(「電車」)、いつまでも堂々巡りな観覧車が象徴するように悶々と暮らすだけのジニー(「観覧車」)。

アレン監督が、アメリカ劇作家に歩み寄って創造した女性の破滅物語。コメディーだと思っていたけど、これはコメディーだったのかな?ただ痛々しいだけで、一向に笑えなかった😖💦

アレン作品を劇場で観たことないから観に行こう!と軽い気持ちで出掛けたけど、スッキリしませんでした😖

〈何を描きたかったの?〉
主人公ジニーを演じるケイト・ウィンスレットはあまり好きな女優さんじゃないんだけど、崩れた人妻の色気(胸の膨らみ)とやさぐれ感が素晴らしく、抜け殻~恋する乙女~女の覚悟を魅力的に演じてくれたから最後まで観られました。

こんなにくたびれた表情と下着姿を晒せる女優魂が天晴れです。

「皿くらい洗ってよ!」のくだりは笑えました。そりゃ、言いたくなるよね😅

大きな瞳で「何で悪い方向に行ってしまうの?」と疲れきった表情で途方に暮れる姿は、ほっとけない気分にさせます。

嫉妬に狂って自業自得に苦しむ姿はアレンらしい痛々しい展開で、ここはさすがの演技力と演出力ですね。

勝ち気な顔のウィンスレットが、徐々に窮地に陥る姿は憐れしかなく、自業自得でもあるため共感もしにくい…最後まで付き合って、何を描きたかったの?と思ってしまいました😓

女のイヤな面はすご~く良く分かりました😨

「私が悪いの」と言いながら、自分では行動を改めきれないジニー、現実よりロマンチックな夢を語るミッキー(ジャスティン・ティンバーレイク、ハンサムでしたね!)、関心が釣りと野球くらいしかないハンプティ(ジム・ベルーシ、腹の丸みが素晴らしい!)。浅はかな行動ばかりするキャロライナ(ジュノー・テンプル、可愛らしかった!)。

彼らはみんな内面が空虚だ。自分の生活(家庭)に絶望し、外側に希望や刺激を求めている。

外側に刺激を求め、ほろ苦い結末を迎えるのは『カイロの紫のバラ』で既に描かれてましたね。

「電車」では人間の性(さが)を圧倒的描写で暴き出す凄さがありましたが、本作は人間の愚かさや痛々しさを残酷なほど見せていて、その「懲りない」姿にやるせない気分になりました。

何だか、痴話喧嘩に付き合わされた気分😖

〈素晴らしい撮影〉
鑑賞する前に一番テンションが上がったのが、撮影監督がヴィットリオ・ストラーロ(『地獄の黙示録』『1900年』『ラストエンペラー』)だと知った時。

憂鬱な物語を堪えられたのは、ストラーロの美麗映像のお陰だな😅‼️

ジニーとキャロライナの姿を神々しく映す陽光(髪が綺麗に光る!)から溜め息が溢れます。ジニーは過去に執着しているため暖色系の色調、キャロライナは未来を見ているため青色系の色調で区別していましたね。どちらもカラフルで深みがあり、それでいて1950年代のレトロ感も醸し出していました。美しすぎる画面に目が釘付け😍💕素晴らしかったです‼️

アレンらしい作品だと思いましたが、ウェルメイドなドラマで終わってしまいましたね。

ワルガキの哀しさ。
彼を一番救ってあげたい!
TakaCine

TakaCine