木葉

女と男の観覧車の木葉のレビュー・感想・評価

女と男の観覧車(2017年製作の映画)
3.7
ケイトウィンスレットが、私はこんなはずじゃない、まだまだ幸せになれるはずと本能的に行動し、観ているこちらを苛立せ、痛々しいヒロインを熱演している。
彼女の豊満な肉体、毒女ぶり、何かに依存しながらも、感情の赴くままに生きる姿はどこか憎めない。
人は他の誰かに依存したり、期待したり、憎んだりすることで、それが後々自分に跳ね返ってくることを、ウディアレンは今回も見事なまでに下世話な人間模様で肌身で感じさせてくれる。
ヒロインのケイト演じるジニーは、若くハンサムなこの映画の語り手、ジャスティンティンバーレイク演じるミッキーと不倫をしている。ジニーの再婚相手の若い娘キャロライナが現れたことにより、夫も恋人も若い娘に関心がいくことに嫉妬し、女の奥底にある嫌らしさ、あざとさ、執念深さを浮き立たせ、こちら側もぐっとすい寄せられる。
ジニーの幼い息子は放火犯で度度、学校に呼ばれるのだが、懲りもせず最後の最後まで火をつけ何かを発散しているように感じる。
ジニーはジニーで若い恋人にここではないどこかへ連れて行ってくれることを期待し、同じ過ちを何度も繰り返そうとする。
自分がして来たことに責任が持てず、悪いことはすぐ忘れ、中身が子供のままで容姿だけ老けていく。
人は、自分の日頃の行いで、自分で自分の人生を壊していることを俯瞰で気付かされる映画でもある。
映画のタイトルの観覧車のように、人間はそうそう簡単には変われないし、一瞬いい景色を見たとしてもそう長くは続かない、ぐるぐる同じようにサイクル、ルーティンを繰り返してしまうのが、避けられない人間の性なのかもしれない。
50年代の美しいコニーアイランドの風景、淡色の街並み、光のコントラストが、どこまでいっても侘しく、移ろいゆく人間の心理、崩れやすい人間関係を一層際立たせていて、素晴らしい。
木葉

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