ウディ・アレン流の語り口は老いてなお磨かれて、わかりやすく人間の悲喜劇をさらりと描ける余裕っぷりが凄い。笑っちゃうほど悲惨で、全員なにかが欠けている。紙一重で噛み合わない埋められない家族模様が、遊園地の舞台でグルグル回転している。
舞台は50年代のNYコニーアイランド。
極彩色に彩られた海辺の遊園地は現実を忘れさせてくれる夢のような場所。しかしここで働きながら暮らすギニーとハンプティ夫妻の色褪せた生活は極彩色とは程遠い。
酒癖が悪く禁酒をしている夫ハンプティ。
常に偏頭痛に悩まされている妻ギニー。
放火ばかり繰り返す息子リッチー。
ギャングに追われ身を隠す娘キャロライナ。
イビツさを絵に描いたような家族の形は、海辺のイケメン監視員ミッキーが入り込むことによってさらにややこしいことに。
全編通してケイト・ウィンスレット演じるギニーのアラフォー女(欲求不満)振りが素晴らしい。
プレゼントに時計を買うあたりからもう笑いを堪えるのが必死で、危うく暴発しそうになった。義理の娘とミッキーの関係をしつこく詮索するくだりでは部屋のライティングが赤や青に揺れて、表情の七変化がこの映画のハイライト。
ミッキーを演じるジャスティン・ティンバーレイクの軽薄な感じ、憎たらしさもありつつ、実は一番真っ当だったりして。
コニーアイランドにある不思議な観覧車『ワンダーホイール』の不規則な軌道で動くゴンドラのように、家族の輪は綺麗に回ることはなく呆然。
コニーアイランドの観覧車、乗ってみたい。あ、『ウォーリアーズ』見たくなった。