NAOKI

女と男の観覧車のNAOKIのレビュー・感想・評価

女と男の観覧車(2017年製作の映画)
3.7
ウソみたいなホントの話…

その話を最初に聞いたときにわかには信じられなくて、とんでもない映画のストーリーかなにかじゃないかと疑ったくらいだ。

アメリカの話…
「ヒステリー」というのはその昔…婦人病の一種だと思われていた。ちゃんと病院で治療を受け投薬を受ける「病気」だったのである。

ところがある医師がこれを疑い病院に来る「ヒステリー」女性患者たちに綿密なヒアリングを行い、ひとつの仮定に達しある治療を施した。
その治療とは器具を使って患者たちの性的満足を引き出すことでした!現在であればとんでもない性犯罪だが…この治療の効果は劇的だった…患者のほとんどからヒステリー症状がなくなってしまったのです。

これにはアメリカの宗教事情がバックグラウンドにあります。キリスト教では快楽のためのセックスは罪であり、それは子供を作る行為以外としては認めないというもの…
だから避妊も堕胎も認めず同性愛や不倫もとんでもないことだったわけです…男どもはこれらを盾に奥さんをほったらかしにするくせに自分は隠れて売春宿などに通ったりしたわけですね。
「ヒステリー」の原因はそんな身勝手な男たちのせいで欲求不満と孤独と閉塞感に精神崩壊を起こした女性たちの「叫び」だったわけです。
このことで「ヒステリー」という現象は「病気」からは現在ははずされているわけで…そしてこのとき医師が使った「医療器具」は「大人のおもちゃ」として現在も残っている…バイブレーターの発祥って医療器具だったとは!

面白い話だなぁ…本当かな?

さて…「女と男の観覧車」
原題は『ワンダーホイール』
NYのコニーアイランドにあるあの観覧車ですね…おれにとって70年代はウォーリアーズの縄張り(しま)でしたね…2000年代になってからはクローネンバーグの「イースタン・プロミス」でロシアマフィアの拠点でした。
NYに行ったときこれらの映画の印象が強かったので真っ先に見に行きました…

この映画では1950年代のコニーアイランドが舞台です。
プラスチックが世の中を支配し始めた時代…そのキッチュな質感と色彩…当時最先端のジャズ…もうたまりません。

内容はどろどろの不倫話で決して楽しい話ではないのだけど…まるでシェイクスピア劇かテネシー・ウィリアムスの戯曲を観てるかのような一種「品格」があります。さすがはウッディ・アレンだなぁ。

白状するとケイト・ウィンスレット…タイプなのです。
最初…「タイタニック」で見たとき「骨太!」と思いました。世をはかなんで自殺を考える貴族のような金持ちの娘にしてはちょっと逞しすぎないか?二の腕逞しい田舎娘みたいだぞ…と思ったものです。
そのあと、その卓越した演技力でスターへと登り詰めるのですが…あれは「リトル・チルドレン」!
この映画も不倫ものなんだけどケイトはジェニファー・コネリーの旦那と不倫するのです!
ジェニファーですよ…もう完璧な美人…なのにこの旦那はケイトに走るんですよ。
ちょっとくたびれた…ちょっと脇の甘そうな主婦…ケイト・ウィンスレットには不思議な色気があるなぁ…とこのとき思いました。おれはケイト…タイプなんだと気づきました。

だから…この「女と男の観覧車」の生活にくたびれたアラフォー・ケイトもやっぱり堪らない色気を感じます。
そんなケイトが「やっぱり病気じゃないの?」と思わせられるほど凄まじいヒステリック演技を見せてくれます。
まだスタイリッシュに見える前半から一気に転がり落ちていく感じのクライマックスはもうカタルシスを感じるくらいの迫力でした。
子育て…親子の断絶…という闇を「放火癖」という形で見せる辺りも上手いです。

そして、久しぶりのティンバーレークもやっぱり上手い!

悲劇が生まれるのはその人自身の責任?

いや…人の運命は…どうあがいても変えられない…

ボラボラ島…
NAOKI

NAOKI