daisukeooka

終わった人のdaisukeookaのレビュー・感想・評価

終わった人(2018年製作の映画)
4.0
熟年世代にはもちろんササるんだろうけど、40代中盤の人達こそ観るべき良作。日本社会で「会社」という存在は依然大きく強く、個人と家族の人生を定義してしまう。転職などで定年の無い人生を選択した人達にも等しく「老い」は迫ってくる。そして会社を言い訳にしたり会社が支えてくれたりすることもなく、全ての選択を自分で責任取らなきゃならなくなる。その「責任」の有り様が、この映画の中でシビアなのだ。
壮介(舘ひろし)には、ギクシャクしてるとはいえ美しい妻がいて、娘や義理の従弟がいて、友人もいて戻れる故郷もある。自分なりに、自分の周りにいる人達とつながって、やりたいことやれることやってこうと、あらためて素直に思い直すのだ。とても典型的な会社→定年→その先の物語だけど、これからはその年代にも、バラエティに富んだ人生がたくさん生まれる時代になるだろう。
ホラーの旗手と名高い中田秀夫監督、個人的にはホラーのみならず、ロマンチックな思いを描くドラマに長けている人だと感じている。喜劇の中に「ロマンを捨てきれない男」がロマンから一歩退く切なさを織り込んで、見事の一言。
壮介と千草(黒木瞳)の選択は、数多くの夫婦が選ぶ人生のうちの一つに過ぎない。二人で選ぶ、その結末がどうあっても、そんなパートナーに出会いたいと心から思わせる。壮介の年齢までもう20年を切った。ちょっとヤバい。がんばんないと。
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