ひこくろ

LOOP/ループ -時に囚われた男-のひこくろのレビュー・感想・評価

4.3
数あるタイム・ループ物のなかでもかなり毛色の変わった部類の映画だと思う。
まず、どのタイミングでタイムループしているのかがまったくわからない。
しかも、どの時間軸に戻っているのかも、なんとなくしかつかめない。

過去を変えることで未来を変えようとするのは、タイム・ループの定番だし、この映画でもそれが目的になっている。
アダムの願いは、大金を奪って逃げだすことと、恋人の命を救い出すことの二つ。
でも、どこだかわからないタイミングで過去に戻ってしまうから、どうすればいいのかもわからないし、当然上手くもいかない。

これだけでもかなり厄介なのに、さらにこの映画はタイム・リープではなく、タイム・トラベルになっているという厄介さも抱えている。
過去の自分に意識が戻るタイム・リープなら、別の行動を取るだけで未来が変わる可能性が生まれる。
ところが、タイム・トラベルの場合だと事情が異なってくる。そこに過去の自分もいるからだ。
過去に戻って別の行動を取った自分が、次の自分の前に現われる。
それだけでなく、その前の自分すらも出てくる。
あちこちで、いろんな行動をした自分が、同時に動いてしまっているのだ。

殺したはずの組織のボスは当たり前のようにまた生きて現れるし、事情がわからない彼女は何度も車に轢き殺される。
どうにかしようともがいても、今度は過去の自分の行動が邪魔になったりする。

とにかく、ひたすらややこしくて、わけがわからない。
でも、そのわけのわからなさが妙に面白い。
ややこしさが癖になりそうな、とても奇妙な、楽しい映画だった。
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