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夜が明けるまでのdalichokoのネタバレレビュー・内容・結末

夜が明けるまで(2017年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

とてつもない映画に出くわした。

我々が映画を見始めたころの大御所俳優の初共演。ロバート・レッドフォードといえば『明日に向かって撃て』、『スティング』、『華麗なるギャツビー』など、若かりし頃に印象的な映画に出ていた彼を忘れない。そしてジェーン・フォンダは2度のアカデミー賞を獲得した実績がある。

特にジェーン・フォンダはこの映画でどのような心境だっただろう。彼女は俳優一家に生まれ、ハリウッドの名優ヘンリー・フォンダとの確執が長く続いた。それはアメリカを代表するヘンリー・フォンダの顔に泥を塗るような『コール・ガール』という映画に出たり、のちに政治活動を繰り広げるなど複雑な親子関係が続いたが、『黄昏』という映画で父と共演し和解するということがあった。そのことがこの映画で影響しているわけではなかろうが、『黄昏』で母親役を演じたキャサリン・ヘプバーンが重なる。あの映画のキャサリン・ヘプバーンがこの映画のジェーン・フォンダに乗り移ったようだ。

ジェーン・フォンダはテレビシリーズでも破天荒な活躍をするなど、老いても盛んな女優だが、映画でいえば『大統領の執事の涙』や『グランドフィナーレ』で一瞬出てきた彼女の存在感がすごかった。

この映画の他人同士の老人は、明日のわが身だ。『幸せなひとりぼっち』や『孤独のススメ』などの映画や、ロバート・レッドフォードが出ていた『ロングトレイル』など、老後を語る映画は多く、それが社会の切実な問題として切りとられていると思う。

ジェーン・フォンダ演じるエディーがロバート・レッドフォード演じるルイスの家を訪れる。この出だしがいい。静かにぎこちなく二人が語り始める。お互いが連れ合いをなくして一人なのだから、一緒に寝るのがいいと持ち掛けるのだ。

これがどんどん進展して、街で噂になるほどに二人は周りからもてはやされる。カフェでルイスをいじる老人に見覚えがあって、よくよく調べたらブルース・ダーンだった。ロバート・レッドフォードとは『華麗なるギャツビー』以来の共演だ。

そして二人にはそれぞれ子供がいる。ルイスの娘とは確執があり、エディーも息子の嫁が逃げて行ったことで孫を預かるはめになる。この孫とのキャンプシーンが素晴らしい。自然の中で過ごすうちに、事の成り行きで飼うことになった犬も含めて美しいシーンだ。孫は再度、携帯ゲームに熱中して話ことさせなかったのに、ルイスの持つ列車の模型などのエピソードを経て、携帯を手放し自然とともに心が溶けてゆく。

ルイスとエディが意を決して街にでてダンスするシーンにも涙する。二人の面影が昔二人が活躍した名作の中に重なってゆく。この二人がスクリーンで初めて重なり合うことを目の当たりにして往年の映画ファンとして涙せずにいられない。

小さいことだが、この映画は自然の音、虫の声や時計の音など、小さな自然音をうまく使っている。孤独の中で過ごす老人の背景に流れる時計の音。そして二人が離れ離れになって、一人のベッドに光るスマフォ。孤独な現実をうまく表現している。
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