Smoky

ホールド・ザ・ダーク そこにある闇のSmokyのレビュー・感想・評価

3.9
「難解」という評価者の多い作品らしいのだけれど、個人的にはとても「しっくりきた」作品。

人間を拒絶するかのような辺境の極寒地(アラスカの外れ。劇中でアンカレッジが「あそこはアラスカじゃない」と言われるくらい…)。人間やその社会を飲み込んでしまうほど、厳しくて「濃い」自然の摂理。そのメタファーとしてのオオカミの存在。曖昧になる自然と人間との境界線。その二つの間にいる(僻地へと迫害された)インディアン。逆に、自然に取り込まれる夫婦(兄弟?)。オオカミと人間の「子殺し」。そして、二人の抱える「闇」。

夫であるバーノンの淡々とした殺戮は、まるでオオカミの狩猟。そこには何の躊躇も留保もない。対照的な中盤の大銃撃戦は、人間による外連味たっぷりな復讐劇。

寒くて殺伐とした空気感は、『ウィンド・リバー』が好きな人にはオススメ。但し、あの映画のような政治的なメッセージは皆無で、薄っぺらなヒューマニズムを排除した、頭ではなく感覚で理解するドラマといえる。
Smoky

Smoky