豊島区民

悪女/AKUJOの豊島区民のレビュー・感想・評価

悪女/AKUJO(2017年製作の映画)
3.9
FPS視点等の画期的なカメラワークを用いたアクション作品。冒頭いきなりFPS視点のアクションシーンから始まり、訳も分からないままあっという間にその世界観に放り込まれる様は観ていてある種の爽快さを感じる。
FPS作品としては『ハードコア・ヘンリー』があるが、『ハードコア・ヘンリー』が全編完全FPSを貫いている一方、本作ではFPS視点と三人称視点を上手く使い分けて活用しており、『ハードコア・ヘンリー』の不満点であった、アクションの全体像が分かりずらいという欠点を克服することに成功しているように思われる。中盤のバイクチェイスやラストのアクションシーンなど、ワンカットでの長回しのカメラワークも特徴的で面白い試みだと思うが、やや無理をして撮影をしている感は否めなくない。
予告編ではアクションシーンをクローズアップした宣伝が行われており、確かにアクションシーンは見所であるが、脚本構成もかなり独特で、しっかりと作りこまれている。現在と過去が入り乱れており、一見するとどの時間軸に自分がいるのか分からなくなるほど、複雑な構成になっている。冒頭シーンの他、突然挿入されるシーンもあるが、ストーリーが後半に進むにつれて、その真相が明らかにされるように構成されており、視聴者を惑わす仕掛けがなされているなど、展開を単調にしないための工夫が施されている。
また、主人公のスクヒ(キム・ オクビン)が物語の過程で異なる人生を歩む人物を演じることになるが、役者や劇中劇といった設定を使うことにより、周囲の者との関係性、その心理や感情を表現する手法も中々面白い。
アクションといえばハリウッドの予算を掛けた大掛かりなものが主流ではあるが、アイディア次第では必ずしもそうした要素に頼りきりにならなくても、面白いアクション映画を作ることができるということを本作が提示して見せた意義は大きいと思う。
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