チャンミ

悪女/AKUJOのチャンミのレビュー・感想・評価

悪女/AKUJO(2017年製作の映画)
3.8
冒頭の、5分以上のバイオハザードなゲーム的主観カメラは正直「おおすごい」は数分で終わったし、その「すごさ」描写以外に意図がつかめなかったのだけと、その10分長回しには韓国映画のアクション撮影技術の余裕を感じるし、それは、中盤のバイクアクションにも通じる。
お話としては、父、復讐相手、アジョシ、と男に振り回され続けた結果、国家組織の女性指揮官のもと、出産を経て子どものために生きる、だけでなく、隣人の男と親密になって心の安寧を得る、という「典型的女の幸せ」展開にはフェミ的にはおもうところがないわけではないのだけど、その安寧の終末からのラストをかんがえると、まあ飲めなくもない。
が、そのあたりの、主人公スクヒの心の揺れと、起因する父殺しの謎を示唆する時間軸のずらし方は、物語への没入を邪魔しているとおもえたし、端的にあまり効果的ではなかった。

スクヒが、冒頭のアクションしかり、すでにアジョシの教育によって殺人マシーンとしての腕が備わっているはずなのに、その後、国家組織のアサシン養成所(美女だけ)で数年過ごさなければ、いけない理由が、(美女だけ)養成所内の大映映画ばりの舎弟関係構築と対立を見せたいという理由で、一般社会に埋没するための職業訓練(が、その内容が料理人、バレエレッスン、俳優訓練、と偏りすぎ!)の時間経過、としか、見えなかったけど、フェミ的には、「女性が生き延びるために手に職をつける」という様子を、再び書きますが大映映画ばりに見せる点を評価することにはやぶさかではありません。
また、国家組織によって、職業のためとはいえ整形手術を強制するとは、これはもしや「美容整形」という、主に視られる職としての「俳優」が自由意志によって見栄えを良くすることも、社会からの要請によるところもあるのでは、という構築主義的立場からの映画による社会批評なのでしょうか、ということも考えましたよ。

さて、本作のハイライトは、冒頭の長回しはじめアクションかなとおもいつつ、終盤に至っては、もうじゅうぶんコリアンアクション技術の髄を楽しませてもらいましたよ、というぐあいだったので、もはや食傷気味だったのですが、最後の最後は、まさかの伝家の宝刀カーアクションの見たことのないドライビングテクニックに加えて(ペットボトル使い!)、そこからの『スピード』以来のバスアクションバトルの更新をはかり、さて始末をどうつけるのかなとおもいながら運転手の心配をしていたら(というかなぜマフィア的な人たちがデスマッチからの逃走のために公共バスで移動してるんだろう……)その運転手が鍵となる「停車」の見せ方、およびあっけない、がゆえに叙情感あふれる決着のつけ方までの運び(これまたワンカット長回し)には、爆笑の嵐でした。
アクションでこんなに笑ったのはギレルモ・デル・トロ監督『クリムゾン・ピーク』のラスト雪山バトル・フューチャリング・チャス子(ジェシカ・チャスティン)以来です。

ごちそうさまでした。
チャンミ

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