MasaichiYaguchi

ゆずりはのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ゆずりは(2017年製作の映画)
3.5
新谷亜貴子さんの同名小説を、「HERO」等の演出家、加門幾生さんが監督を担当し、ものまねタレントのコロッケさんが笑いを封印して本名の「滝川広志」で主演して映画化した本作では人の「生と死」に向き合っていく。
「ゆずりは」の名は、春に枝葉に若葉が出たあと、前年の葉がそれに譲るように落葉することに由来していて、親が子を育てて家が代々続いていくようにという縁起物とされている。
本作では主人公達が働く葬儀社の庭に植えられていて、テーマに直結するものとして象徴的に登場する。
葬儀社が舞台になっているので、様々な人の死と遺された人々のドラマが主人公達の視点から描かれていく。
葬祭をモチーフに人の生死を見詰めた映画というと、アカデミー賞外国語映画賞に輝いた「おくりびと」や今年3月に公開された「おみおくり」があるが、本作もこれらの作品同様、死と向き合うことで生きる意味を見出していく。
主人公で葬儀社営業部長の水島正二は仕事柄、遺族に対して感情的にならないようにしているが、私生活でも過去に犯した取り返しのつかない過ちによる重い十字架を背負っていて感情の起伏を失っている。
そんなある日、水島とは全く対照的なイマドキの若者・高梨歩が入社してくる。
葬祭という儀礼を重んじる場でイマドキで〝掟破り〟の高梨は様々な波乱を起こすのだが、彼は水島とは違って自分の感情をストレートに出して遺族に心から寄り添おうとする。
水島はそういう高梨に叱咤しながらも、高梨の中に自分が失いかけていたものを見出していく。
そして後半から終盤にかけて描かれる二つの死。
この二つの死は様々な形で水島にトラウマとなっている重い十字架と向き合わせることになる。
私と家内の高齢の両親は幸いにして健在だが、この作品で描かれたようにいつかは彼らの死と向き合わなければならない時がくる。
そして本作の主人公達のように彼らの「死」を通してその「生き様」を知り、「心」を受け継いでいければと思う。