うどん権

ゆずりはのうどん権のレビュー・感想・評価

ゆずりは(2017年製作の映画)
3.6
他人の死に触れすぎたためか、心が死んでしまったベテラン葬儀屋の水島と、彼にはない心の暖かさをもった新人高梨の成長物語。

「葬儀屋は遺族に寄り添いつつも、一方で感情に流されて葬儀運営に支障をきたしてはいけない。葬儀中泣くなど御法度」。
この鉄則を守ることに固執したことで、遺族から一歩引いた姿勢で接してしまっていたベテランの水島。私生活での不幸も重なったことですっかり心が淀んでしまっていた。
一方で新人の高梨は鉄則に縛られず、遺族に心から寄り添うことで、遺されて悲しみに沈む彼らを癒し、心からの信頼を得ていた。
やがて彼の姿を見ていた水島も昔の心持ちを取り戻し、まだまだ不器用な高梨を引っ張っていく存在に。
ベテランと新人、共に足りない部分を補い合って成長していく構図が良い感じ。

「ゆずりは」とはとある植物の名なのですが、本タイトルにぴったり。理由は映画を見ればわかります。
「生」と「死」。その向き合い方を葬儀屋である2人の主人公の歩みを通して見つめ直します。

葬儀屋に訪れる遺族も様々。夫に先立たれてしまった妻。いじめで娘が自殺し、悲観に暮れる両親など…
彼らと織りなすエピソードが、人の死という痛みを感じながらも、最後は共感できたり、心温まるものとなっています
予告でもチラッと映った、葬儀中にも拘わらずお喋りを続ける参列者に対して、高梨が「出ていけ!」と怒鳴りつけてしまったシーンも印象的。皆さんも同じように思ったことありません?

主演はモノマネ芸人として有名なコロッケさんですが、初めて本名・滝川広志名義で挑む力の入れよう。
実際滝川さんの演技は素晴らしく、モノマネ芸時のコミカルさは鳴りを潜め、堅物キャラの水島を見事に演じ切っています。

惜しかったのは終盤の駆け足感。序盤から中盤にかけては堅実なストーリー運びだったのですが、終盤になって唐突に劇的なイベントが連発して違和感が。ご都合主義感が拭えません。
演出の方も全体的にかなりあざとくて、露骨に観客を泣かせにきているのがわかります。でもまぁ結局泣いたんですけど(笑)なんだかんだ言いつつも鑑賞後は心が洗われました。
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