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ボビーのodyssのレビュー・感想・評価

ボビー(2006年製作の映画)
3.5
【1968年アメリカの群像劇】

ロバート・ケネディが暗殺された事件を記憶する者として、ちょっとなつかしい気持ちで見た映画です。

といっても当時の私は中学生。アメリカの実態を知っていたわけではありません。その後色々勉強する中で68年前後のアメリカの風俗を知識として頭に入れていったわけです。

例えばLSD(幻覚剤)でラリってしまう若い民主党支持者が出てきますね。日本では薬物に対する規制が厳しく、60年代から70年代にかけての若者たちの叛乱の時代にも薬物に意味を与える動きはほとんどなかったわけですが、アメリカでは薬物によって現実を超越し、また芸術を製作するといった傾向が強かった。

ヴェトナム戦争での徴兵を恐れて結婚に走る若者たちも、反戦運動が盛り上がったあの時代の一つの側面であったはずです。

「忙しいのだから選挙に行くな」と厨房労働者に申し渡したマネージャーをホテル支配人がクビにするのも、あの時代の、いや、アメリカ・リベラリズムの率直な表れと見るべきでしょう。南北戦争によっても消えることのなかった人種差別に対する「NO」の声、或いは社会的弱者への眼差し、といったものがはっきり表に出てきたのがあの時代だったから。

群像劇だからいろいろな人間のいろいろな様相が渾然一体となっているけれど、時代ってのはそういうものですよね。決して一色ではなく、けれど他の時代から見ると特有の色がある、という意味で。
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