神戸典

映画ドラえもん のび太の宝島の神戸典のレビュー・感想・評価

3.5
これまでと大きく変えてきた作画はまるで昔のドラえもんのようでありながらも、色彩は現代の鮮やかな作りになっている。

父と息子の関係を伝える作品になっており、それをお互いの視点で描くことによって、
父親も子供もお互いに大切なことや想いをどちらも知ることができる作品。
それぞれの想いがぶつかり中で、友情や愛情を知る旅。

クライマックス、フロックがシルバーに言った言葉「当たり前じゃないか、僕は父さんの子供だから。」に涙腺をやられた。
これまで許せない苛立ちを募らせていたフロックの心に埋もれた父を求める子供心や愛情が一気に溢れ出した言葉と表情がとても良かった。

子供の意見というのは時に、耳を傾けるのも面倒なほどに綺麗事に聞こえるかもしれない。しかし、どんな時でも常に大人が正しいのだろうか。大人も大きな子供だ。
経験が多いから判断力があるだけで、時に道を誤ることもある。
そんな時、本当に大切なことは自らがこうすることが正しいと思い、出した答えよりも単純なことなのかもしれない。
家族が一緒にいること。みんなが辛い思いをしないこと。みんなの幸せを願い、誰かが苦しんでいる時には悲しんであげられる人。
大人は子供の大切さを思い出し、正面で意見を聞こうとする姿が大切だと感じた。

そして、子供はどんなに親の意見に反した行動を取っても心の中には常に親への愛情が灯されている。
大切なものは金や財宝なんかではなく、
隣にいてくれる仲間。そして家族である。
この作品では家族をのび太と父親、フロックとセーラと父親を描いているのはわかるが、さらに海賊という一味さえも家族であるということを本来の海賊のイメージを覆して描いている。
家族とは言ってもその言葉がどこまで広げられるか。それを問われているような気がする。また、海賊の中で女性が活き活きした姿はジブリのようで、平和のあり方のようにも感じた。
神戸典

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