dm10forever

ラッカのdm10foreverのレビュー・感想・評価

ラッカ(2017年製作の映画)
4.0
【一喜一憂】

これは中々面白い。
短編だと思ってうっかり「ナーメテーター案件」。

物語は、平たく言ってしまえば「異星人襲来モノ」なんですが、その圧倒的な戦力の前に人類はもはや「ペット」や「家畜」と同類の扱いとなってしまった近未来が舞台。
やっぱり短編だろうとも手を抜かないっていう感じがいいよね。

ディストピア感漂う廃墟と化した街並みもかなり作りこまれているし、人体損壊シーンも結構しっかり作ってあるし、何より異星人の絶妙な造形がイイ。

恐らく勝手な固定観念なんだろうけど「人型=知的水準高め」って思っている節があって、顔がどんなに不細工(地球人から見てっていう意味ね)だろうとも、二足歩行で歩かれると「ムム・・・一筋縄ではいかぬぞえ」と身構えてしまうわけです。
例えていうなら「プレデター」は賢いけど「エイリアン」は野生の勘で動いているみたいな違いかな。

で、そんな奴らが満を持して地球を征服にかかるわけですよ。
根本的に「戦闘」に不向きな種族の人間なんて、管理するのも駆逐するのも楽なんだろうな・・と。

もちろんアングラで活動する、いわゆるレジスタンス達もいるんだけど、もはや風前の灯火なんですよね。
でも、その感覚がとてもリアルに感じます。

あくまでも「例え」として出すんですが、「世界侵略:ロサンゼンルス決戦」という作品が数年前にありまして、我らがアーロン・エッカートがいつにも増してケツあご全開で頑張っていたんですが、あれはいわゆる「起承転結系」であり「勧善懲悪系」であり「止まない雨はない系」なんですね。
つまり「最期には必ず地球人が勝つ」。「ID:4」なんかもそうかもしれない。

・・・でも、そんなにうまくいくもんだろうか?
もちろんあれは「映画」だからラストはうまくいってくれないと困るんだけど、実際はあんな小手先のラッキーパンチ程度で敵のマザーシップごと壊滅するような「ピタゴラスイッチ的弱点」なんてあり得ないし、万が一あったとしても、まず一線級の防衛線をそこに充てて絶対に突破されないようにするだろうし、そもそも地球人が徒歩で到達できるような場所にわざわざ弱点を置いたりしないし・・・。

つまり相手もバカじゃないということは、当然こっち(地球人側)の戦闘能力や人間個体の限界値、保有する武器等はまっ先に調べるだろうし、仮に僕が宇宙人(攻撃する側)だとしたら、まず最初に地球人の要所(基地やミサイル等)を攻撃して大規模な反撃が出来ないようにするし。

そういった意味では「反乱軍」が持つあらゆる「力」を見れば見るほど、逆に絶望的にすら感じられるんですね。

まして、敵は武力だけではなく脳波までもコントロールしてくるとなると、もう勝ち目はないんです。
どんなにあがいたところで、弱肉強食という自然の摂理の中で今度は人間が淘汰される順番になったということに過ぎないんですね。

そもそも、人間は強くもないのに弱肉強食の頂点に立った気でいる時点で生態系のバランスは崩れているし、そりゃサノスが不思議な石を集めて指パッチンしたくなる気持ちもわからなくもない。

だから、そんな人間が抗えないくらいの力を目の当たりにして、自分たちが「弱肉強食の『弱』」であるということをまざまざと見せ付けられたとき、それでもヒロイックなSF映画のような「明日への希望」を持てるんだろうか・・・。

『今日勝ったところで・・・・・』

今まで見てきたSF映画の影響で、仮に宇宙から攻め込まれても、地球側もそれなりに反撃して「戦う」と思っていた。
でも、現実的に考えて「攻めてくる異星人」を相手に戦える状況なんか想像すら出来ない。
仮に相手がマーズアタック的なアレだとしても、きっとメッタメタにやられると思う。
そもそも人類は戦闘に不向きな種族だしね。

こんな餌や資源が豊富な割りに弱っちい星、俺が宇宙人なら真っ先に狩るけどな・・・。
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