ニール・ブロムカンプ監督と、彼が立ち上げた「OATS STUDIO」の製作による、実験的SF短篇集の1篇。
起承転結というよりは、核になるSF的着想や世界観設定の部分の具現化に焦点を絞ったスケッチのようなスタイルだが、どの短篇にも監督の独創性の高さと着想の原典を見ることができる。
圧倒的な科学力を持つグロテスクな異星人の襲来によって文明がほぼ崩壊してしまった地球で、僅かに生き残り抵抗を続ける人類を描くポストアポカリプスSF。
ジェームズ・キャメロンの「ターミネーター」で描かれた、機械に支配された未来世界で人類が抵抗するシーンに対するリスペクトがあるように感じる。
主演をシガニー・ウィーバーが担っているところにも、80〜90年代SF映画に対する監督の強烈な愛を見ることができる。
ニール・ブロムカンプ監督の個性に、無骨で質量感のあるSFガジェットの描き方と、圧倒的で容赦のない暴力性があることは多くの人が認めるところだと思うが、この作品でもそれが際立っている。
特に、中盤にある異星人から地球人への降伏勧告のシーンは、どうやったらこんな地獄のようにグロテスクな画が着想できるのだろうと驚いてしまった。
OATS STUDIOの他篇と同じく、悪夢的世界観の提示と壮大なプロローグといったところで終劇するので、もっと観たい! という読後感になるが、この世界観が仮に2時間の長篇になるとしたら、鑑賞後は相当ハードに精神力を削られてしまうかも… とも思う。
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